国会では、衆議院予算委員会が開かれています。
きのうも野党議員から…
岸田内閣の看板政策である「新しい資本主義」とは何か?
…を質問されていました。
岸田総理は「成長と分配の好循環で…」と、施政方針演説と変わらぬ抽象的な答弁でお茶を濁して逃げていました。
といって、仕掛けた野党側も、実のところ資本主義とは何なのかをよく理解していないから追求に迫力がでない。
もしも私が野党議員であれば、「そもそも資本主義って何ですか?」「経済の目的とは何かを知ってますか?」「総理の言う成長とは何の成長のことですか?」「例えば年間、何%の成長が必要なのですか?」「分配の格差はどのように是正するのですか?」「小泉内閣以来の新自由主義がダメなら、どのような主義が必要だと考えているのですか?」等々、まずはそこから質問します。
「新しい…」とか「新しくない…」とかにかかわらず、そもそも「資本主義とは何か!」について理解しているかどうかがポイントです。
例えば京都大学准教授の柴山桂太先生は「長期間(30〜50年スパン)にわたりGDPが毎年1%以上成長していない経済は資本主義の定義を充たしていない」としています。
なるほど、柴山先生の定義からすると、この30年間の日本経済は資本主義の定義を充たしていません。
つまり、新しいとか古いとかのレベルではなく、そもそも資本主義ですらなかったということになります。
あるいはヨーゼフ・シュンペーターは、資本主義の定義を①生産手段の私有制、②自己利益と自己損失責任、③民間銀行による決済手段の創造、としています。
なるほど、経済活動の内生から「資本」を創造するから資本主義と言うわけですね。
だとすると現在の日本は、この25年間にわたりデフレ経済下にありますので、内生からの資本創造が圧倒的に欠如しています。
そこで、内生からの資本創造を拡大するにはどうすべきか!、それを具体的に審議するのが国会の役割であってほしい。
結局、質問する側も、質問される側も「資本主義」の定義ができていないから、質疑が永遠に噛み合わないわけです。
その点、いまの政治家たちの言葉に対する不誠実さを感じ得ません。
さて一方、お隣の横浜市では、直近の推計人口が戦後初めて前年より減少することになりました。
2065年には生産年齢人口が現在より3割減る可能性があるとのことです。
それを日本経済新聞社が「(生産年齢人口が減るから)税収の半分を個人市民税に依存する財政に危機が迫る」と、例によって恐怖プロパガンダを展開しています。
また、横浜市長の山中氏も「(生産年齢人口が減るから)いま行動しないと近い将来、財政破綻に向かっていく可能性がある」と記者会見で述べています。
横浜市長も日本経済新聞も「人口が減るから税収が減る…」という固定観念に取り憑かれていますが、だったら14〜15世紀のイタリアで起こったルネッサンスをどのように説明するのでしょうか。
あの時代のイタリアは、人口が減少したにもかかわらず立派に経済成長したではありませんか。
いつも言うように、経済成長の源泉は人口の多寡ではなりません。
そのことは資本主義を正しく理解していれば分かることです。
資本主義を理解しない人たちが「人口が減るから行政支出を切り詰めて財政再建しなければ…」という発想に陥って、かえって国民生活を奈落の底に突き落とすことになるわけです。
国であれ、地方であれ、マスコミであれ、資本主義を理解していない人たちが国民を不幸にします。
なによりも、政治家やマスコミが言葉に対してあまりにも不誠実であることが大問題です。