岸田総理は昨年9月、自民党総裁選挙に立候補されるにあたり「小泉改革以降の新自由主義的な政策を転換する」と公約されました。
そしてみごとに当選され、今度は自民党総裁として先の衆議院総選挙において「新しい資本主義で分厚い中間層を再構築する」と訴えて勝利し、総理大臣となって岸田内閣を発足させたわけです。
岸田さんは「小泉改革以降の新自由主義」を次のように評価されていました。
①新自由主義的政策(構造改革や規制緩和)は、日本経済の体質強化と成長をもたらした
②他方で富める者と富まざる者の格差と分断を生んできた
ゆえに岸田さん曰く「だからこそ、今までと同じことをやっていたら格差はますます広がる。成長を適切に分配しないと格差の拡大は抑えることができない」と。
ただ、岸田さんの言う①の「小泉改革が日本経済の体質強化と成長をもたらした」というご認識は何かのお間違いでしょう。
小泉内閣が行った凄まじい緊縮財政は国内経済をデフレ化させ、国民の実質賃金を押し下げました。
それでも僅かながらにGDPが増えたのは、当時の米国が住宅バブルで景気が加熱していたため、対米輸出が伸びたからです。
純輸出(=輸出額ー輸入額)はGDPに加算されるため、国内経済がデフレであってもGDPは増えるわけです。
しかしながら例えGDPが増えても、それこそ構造改革が進められていたため、その利益は主として輸出産業の「株主」と「経営陣」に還元されました。
一方、岸田さんの言う②は事実です。
新自由主義的政策によって、富める者と富まざる者の格差が生じ、国民の分断をも齎したのです。
未だに岸田さんの言う「新しい資本主義」が何を意味しているのか理解できませんが、分厚い中間層を再構築することは急務です。
そんな岸田自民党に僅かながらも期待を寄せていたのですが、すでにその期待は大きく裏切られています。
例えば、岸田総理は1月21日、オンライン形式で行われた日米首脳協議で、バイデン米大統領にTPP(環太平洋パートナーシップ協定)への復帰を要請しています。
TPPこそ、まさに新自由主義的、グローバリズム的政策そのものです。
そのコンセプトは次のとおりです。
1.モノやサービスの移動の自由化
2.資本の移動(直接投資、証券投資)の自由化
3.労働者の移動の自由化
ここで言う「労働者の移動の自由」については、当初は専門職に限定されるでしょうが、やがては単純労働者を含めた全ての労働者の移動の自由が認められるのは必定です。
既に、我が国の『外国人技能実習生制度』は徐々に緩和されており、事実上の移民受入を容認していることからも明らかです。
例えばTPP加盟国であるベトナムの国民所得は日本の約30分の1という水準です。
TPP11のなかに、日本のような製造業大国は一つもありません。
そうしたなかで日本がTPPに参加し、最終的に単純労働者の移動の自由が認められてしまうと、我が国の製造業が低コストなベトナム人労働者等を雇用していくこととなり、日本人労働者の賃金が同水準に引き下げられることになります。
もしくは、そうした批判を免れるために、多くの製造業者はベトナムなどの低賃金国に工場を移転してしまう可能性もあります。
だからこそ「岸田総理は米国をTPPに引き入れようとしているのだ」という反論もあるでしょう。
しかしながら、オバマ大統領時代のTPP交渉では、工業製品に関する関税撤廃率は日本が99.1%であったのに対し、米国は67.4%でした。
しかも米国は多くの例外規定を設け、ほとんど一方的に日本側の関税が撤廃される寸前でした。
工業製品だけではありません。
あのときの交渉で我が国は医療、金融、公共調達、知的財産等の構造改革を強要され、聖域であった農業品についても7年後には関税撤廃にむけた再協議が行われることになっていました。
トランプ政権になって結果的に交渉は決裂しましたが、トランプ政権はFTA(二国間協定)交渉により日本に対してTPP以上の要求を突きつけていたことは言うまでもありません。
以上のように、極めて新自由主義的な政策である「TPP」に前のめりになっているが岸田政権です。
既に新自由主義を見直しているバイデン米大統領が、岸田さんのTPP参加要請を受け入れる可能性はゼロでしょうけど。