ウクライナ当局によれば、ロシアはウクライナ東部の国境付近に、既に10万人超規模の部隊を動員しているらしい。
先日のブログでも申し上げましたとおり「ウクライナのNATO加盟、すなわちNATOの東方拡大は、ロシアの主権を脅かすものだ」としてプーチン露大統領はウクライナ侵攻の準備を整えており、地政学的緊張が高まっています。
これに対しバイデン米大統領は「ロシアがウクライナへ侵攻すれば『前例のない制裁』を科す可能性がある」としてロシアに侵攻を思い留まるように圧力をかけていますが、プーチン露大統領もまた「新たな制裁を発動すれば両国関係の完全な断絶につながるおそれがある」と警告を発しています。
膠着状態が続いていますが、米露両国は今月にもスイスのジュネーヴで対面協議する予定です。
そうしたなか、中央アジアのカザフスタンで発生した抗議デモを受け、ロシアが主導する旧ソ連軍事同盟であるCSTO(集団安全保障条約機構)の加盟国が相次いでカザフスタンに部隊を派遣しています。
ロシアの空挺部隊に続き、アルメニア、ベラルーシ、キルギスタン、タジキスタンの部隊が派遣されたようです。
カザフスタンではデモ隊と警察の衝突で数十人が死亡しているとのことです。
CSTOは「国および軍の重要施設を守り、状況を安定化させるために法の執行機関を支援する」と発表しています。
CSTOが実際に共同で行動するのは、おそらく20年前に創設されてからはじめてのことではないでしょうか。
今回、カザフスタンのトカエフ大統領がCSTOに支援を要請したため、欧米諸国は事態を見守っている状態です。
加えて、もうひとつロシアにとって大きな問題があります。
それは年明けの1日、フィンランドのニーニスト大統領が年頭の声明で「フィンランドの戦略と選択の自由には、NATOへの加盟申請の可能性が含まれる」と述べたことです。
要するに、フィンランドのNATO加盟を示唆することで、プーチン露大統領を牽制しているわけです。
これによりプーチン露大統領はジレンマを抱えることになりました。
このままウクライナへの圧力を強め過ぎればフィンランドやスウェーデンのNATO加盟問題が再燃しかねず、逆にウクライナ問題で妥協すればプーチン露大統領の権威が低下してカザフスタンなど中央アジアでの影響力が失われることになります。
むろん、中央アジアでの影響力が失墜すれば反政府運動がロシアにも波及しかねません。
カザフスタンの混乱がロシアに波及することは、プーチン露大統領が最も恐れていることであるにちがいない。
カザフスタンのように旧ソ連の一員だった強権的な国で市民の不満が爆発すると、ロシアでの反政府活動も勢いづくことになります。
ロシアと国境を接するフィンランドは、旧ソ連時代には度々侵略を受けています。
これまで経済面ではEUに加盟しながらも、軍事的には中立的な立場を保ちNATOには加盟してきませんでした。
しかし、潮目が変わったのは2014年のロシアによるクリミア強奪だったようで、これによりロシアの脅威が高まったと判断し、NATOとの連携を強化してきましたが、ここにきてウクライナ問題が加わった格好です。
プーチン露大統領にとってはまさに悩ましいところです。
ロシアがウクライナへの圧力を高めれば高めるほどにフィンランドやスウェーデンのNATO加盟問題が浮上し、圧力を弱めれば弱めるほどにプーチンの権威と中央アジアでの影響力が失墜します。
ウクライナに対するプーチン露大統領のアクセルの踏み具合は実に難しい。