岸田内閣発足後の11月29日、自民党は党内に『財政政策検討本部』を設置しました。
当該本部は積極財政派の西田昌司参議院議員が、同じく積極財政派である高市早苗政調会長に提案して設置されたらしい。
ゆえに本部長には西田昌司参院議員が、顧問には高市早苗政調会長がそれぞれ就任されています。
因みに最高顧問には、高市さんの後ろ盾である安倍晋三元首相が就いています。
この人事から見てもわかるとおり、緊縮財政の権化たる財務省はもちろんのこと、宮沢洋一税調会長ら党内の緊縮財政派をかなり意識した布陣です。
西田本部長は、財政支出の規模はプライマリーバランス(基礎的財政収支)の状況ではなく、インフレ率で調整すべきとの認識を示しています。
大規模な量的緩和を柱とした日銀の金融政策は既に効果薄となっていることからも、インフレ率2〜3%を上限に10年間で200兆円から300兆円規模の財政支出を行うべきだ、と西田本部長は主張されています。
このブログでも再三申し上げておりますが、日本経済が成長せず実質賃金が下がりつづけているのは、デフレ経済(需要不足経済)が続いているからです。
そこで不足する需要を埋めるための大規模かつ長期的な財政出動が必要なのですが、プライマリーバランスという縛りを設けているためにそれができません。
だからこそ西田本部長は「プライマリーバランス黒字化目標を捨て、インフレ率を基準にして財政支出を拡大すべきだ」と言っているわけです。
そこで必ず、緊縮財政派からでてくる批判が「そんなことをしたらインフレ率を抑制できなくなる」です。
しかしながら、これまでインフレ率が抑制できなくなるまで財政を拡大したという歴史的事例は日本はもちろん世界を見まわしても一つもありません。
ここにきて、ガソリンをはじめ石油関連価格や輸入食料などが上昇していることをもって「財政の引き締め」を叫ぶ人たちもがいますが、これらはコストプッシュ型インフレの典型です。
供給制約に起因するコストプッシュ型インフレを緊縮財政によって対応しようとするのは適切ではありません。
緊縮財政によって無理に需要を縮小させ、それを供給水準と一致させれば確かにインフレは収まりますが、それではたんに国民をより貧しくするだけです。
コストプッシュ型インフレの根源的な要因は供給制約にあるわけですから、その対策は供給制約を緩和するものでなければなりません。
例えばインフラの整備、研究開発、人材の育成、あるいは石油代替エネルギーの開発や食料生産の拡大等々、大規模で長期的で計画的な公共投資、ほか民間投資に対する各種の助成や支援が必要になります。
なので結局は積極財政が必要になります。
それに現在、エネルギーや食料を除いた消費者物価指数(コアコアCPI)は8ヶ月連続のマイナス(昨年11月時点)で推移しており、完全なデフレ状態にあります。
デフレを克服させるためにも、コストプッシュ型インフレを克服するためにも、速やかなる財政出動が必要です。
今年がPB黒字化目標の凍結元年となるよう、自民党の『財政政策検討本部』に期待します。