無意味化している日本の量的緩和

無意味化している日本の量的緩和

米国の中央銀行であるFRB(連邦準備銀行)が量的緩和を縮小するとのことです。

昨年3月、FRBは新型コロナウイルス感染拡大が本格化したことからゼロ金利と量的緩和を開始しました。

とりわけ量的緩和については、当初は無制限で購入していました。

同年6月以降からは米国債を月800億ドル、住宅ローン担保証券(MBS)を月400億ドルペースで購入していましたが、きのうの決定によって今月から国債は100億ドル、MBSは50億ドルペースで購入額を減らし、来年6月には購入量をゼロにする計画とのことです。

日本とは異なり、バイデン米大統領は政府の財政支出を拡大していますので、米経済はインフレ率が適度に上昇していました。

なおここにきて、半導体不足や物流の混乱、あるいはエネルギー価格が高騰したことから9月の個人消費支出物価指数が前年同月比で4.4%(約30年ぶりの高水準)に上昇したことが量的緩和縮小の決め手になったものと推察します。

むろん、再び経済情勢が悪化した場合に備えて、緩和余力を残すためでもあるでしょう。

現にFRBのパウエル長官は「(もしも経済状況が変化すれば)購入ペースを再調整する用意がある」と言っています。

因みに、我が国の中央銀行である日銀も量的緩和を行っていますが、日本の場合、未だインフレ率がゼロ%で推移していますので、日銀は2013年以来ずっと量的緩和を継続しています。

政府が財政支出を大規模かつ長期的に拡大しないかぎりインフレ率はピクリとも上がらず、日銀は緩和を続けるほかないでしょう。

ただし、冒頭のグラフのとおり、ことし6月時点での日銀の国債保有割合は未だ44%台です。

これまで、いつ50%の大台を超えるのかと思って注視してきましたが、なかなか超えないところをみると、もしかすると実質的には量的緩和は終了しているのかもしれません。

繰り返しますが、政府がPB赤字を拡大するかたちで財政支出を拡大しないかぎり、量的緩和なんてやってもやらなくても同じです。