恐れていた事態が進行しています。
世界のサプライチェーンが正常に機能しなくなっています。
「コロナ危機さえ解決すれば、やがて経済は正常な状態に戻る」という予測は大間違いであり、コロナ危機による自粛経済が各種供給能力を毀損してしまうがために、例えコロナ危機による自粛経済が明けたところで需要に供給が追いつかないという事態を招きます。
リーマン・ショックであれ何であれ、ショックの後に経済が長期的に停滞してしまうのはそのためです。
加えて我が国では、コロナ・ショック以前からの消費税増税ショックが重なっています。
世界を見回すと、例えばイギリスでも、それまで店頭に並んでいたスパイダーマンの人形から自動車用の半導体に至るまで様々な分野で供給が滞っています。
米国においても然りです。
ロサンゼルス港湾局長によれば、ここ数日、何十隻のコンテナ船が入港を待っている状態が続いているらしい。
「そのことが、大きな悪影響を与えている」と、ウォール・ストリート・ジャーナルが言っています。
例えばナイキはクリスマスシーズン向けに十分なスニーカーを確保できず、コストコはペーパータオルに購入制限を儲けているらしい。
人口クリスマスツリーの値段などは25%も値上がりしているのだそうです。
こちらは世界のサプライチェーンが困難に直面していることの顕れです。
その理由の第一は、むろん新型コロナウイルスの感染です。
例えば英紙フィナンシャル・タイムズのクレア・ジョーンズ記者は、今年はじめにイングランドがロックダウンを解除したときに次のように解説していました。
「ロックダウン以来、私たちはずっと家に留まり可処分所得の大半を費やしてきたイベントや外食におカネを使わなかったが、そのおカネが今はモノに向かっている」
なるほど、このことがさらなる問題を誘発しているわけです。
ロックダウン後の需要を急増させた一方、コロナ禍により工場が閉鎖され、従業員も解雇されてきたために極端な労働力不足が発生しています。
さらに深刻なのが海運です。
世界の貨物の90%が船で運ばれています。
上のグラフのとおり、日本に至っては99.6%、即ち貨物のほぼ100%が海運に依存しています。
ご承知のとおり今年は、世界的海運網の脆弱性が明らかになりました。
エジプトのスエズ運河はアジアと欧州をつなぐ近道ですが、1隻の貨物船(エヴァ−・ギヴン号)が動けなくなり大混乱に陥りました。
エヴァ−・ギヴン号からパンデミックまで一連の脆弱性によって、多くのコンテナ船があるべき場所にない状態に陥っています。
これがさらなる供給不足(需要過多)と運送料の高騰につながっています。
当然のことながら、運送費の上昇がさらなる困難を招いています。
例えば、木材市場のあらゆるセクターで価格が上昇していますし、そしてサプライチェーンの不安定化が配達ドライバー不足をも招いています。
米誌フォーブスも「米国では雇用主が労働者を必死に探している」と報じています。
ロサンゼルス港の船着き場の遅延もまた労働者不足が一因のようです。
新型ウイルス、海運、そして労働者不足…
これまで国境を否定した「グローバル経済」に依存してきたこと自体が、いかに愚かであったのかを人類は思い知るべきです。
過日の当該ブログでも指摘したとおり、あくまでも私の仮説ですが、やがて日本では銀行による貸し渋り、あるいは貸し剥がしの問題が深刻化する可能性があります。
だとすれば我が日本では「需要があるのに仕入れができない」「需要があるのに労働者が足りない」「需要があるのに運転資金が足らない」という悲惨な事態が迫っているかもしれないのです。