家計は収入に応じて支出を決める。
むろん、それは正しい。
しかし、政府の場合は異なります。
今の日本経済のように需要量が供給量を下回るデフレ経済下において、もしも政府が収入に応じた支出を続けた場合には永遠にデフレから脱却することができず、国力の源泉たる供給能力(人材、生産資産、技術力)はますます以って毀損されてゆき、中間所得層の一層の破壊が進んで国民の総貧困化に歯止めがかからず、やがて発展途上国となります。
では、政府は何に応じて支出を決めるべきなのでしょうか。
結論から言えば、インフレ率(物価上昇率)です。
モノやサービスの値段は、需要と供給のバランスで決定します。
例えば、数十人が山で遭難し、飲水を確保できない場所に取り残されていたとします。
みんなの懐にはカネがある。
でも水がない。
幸いにして救援隊が水と食料をもって向かっているのですが、その到着までにあと2〜3日はかかる。
そこでたまたま遭難者の一人がコンビニで1本100円のペットボトルの水を10本だけ持っていたとします。
このとき遭難者にとってペットボトルの水の付加価値はコンビニで売っているそれよりもはるかに高い。
もしも売買が成立することになれば、まちがいなく1本あたり100円以上の価格で売ることができるはずです。
需要量に対して供給量が圧倒的に不足しているわけですから当然でもあります。
逆に、もしも飲水がふんだんにあるところだったら、ペットボトルの水など価値は無いに等しく1円でも売れない。
要するに需要と供給のバランスによってモノやサービスの価格は決定します。
今の日本は圧倒的に需要量が不足しています。(デフレ経済)
その証拠に、インフレ率(コアコアCPI)は長きにわたってゼロ%が続いています。
よって、新たな需要(支出)を創出しなければなりません。
でも収入に応じて支出を決める家計は、デフレで収入が増えない以上は支出を増やせない。
企業もまた、デフレが脱却されないかぎり設備投資や雇用を拡大できない。
唯一、デフレ下で支出を拡大できるのが「政府」です。
なぜでしょう?
むろん、政府には通貨(円)を発行する権限があるからです。
デフレ下においては政府にとっての収入である税収も増えません。
だからと言って、政府が税収に応じた支出をしていたら最悪です。
一向にデフレが払拭されませんので。
だからこそ、政府が通貨を発行して支出を拡大する必要があります。
では、政府はどこまで支出を拡大できるのか?
それがインフレ率です。
要するに政府財政は、収支が黒字なのか赤字なのかではなく、あるいは財政赤字の額の大きさでもなく、ただただ財政が経済にとってどのような機能を果たしているか、つまりインフレ率にどのような影響を与えているかで判断すべきなのでございます。
因みに、いま行われている自民党総裁選で、このことをちゃんと理解されているのは高市早苗候補だけのようです。