残念な新聞!

残念な新聞!

今月3日、総務省から令和3年度(2021年度)の地方交付税交付金(普通交付税)の決定額が発表されました。

総額は16兆3921億円で、そのうち道府県分が8兆9276億円、市町村分が7兆4645億円です。

交付団体は道府県、市町村をあわせて1711自治体です。

川崎市も6年ぶりにようやく交付団体になりました。

これを経済財政音痴の『東京新聞』が「(川崎市は)交付団体に転落した」と報道しています。(8月4日付 朝刊)

どうやらこの新聞社は、地方交付税制度を「自治体の生活保護制度」であるかのように誤解しているようです。

まるで、放漫財政により自主財源ではやっていけない自治体を国が救済している、みたいに。

そもそも日本全国において、完全な自主財源だけで行政運営できる自治体など首都である東京都以外にはありません。

例えば、川崎市の昨年度(令和2年度)の自主財源(市税収入)は、約3650億円でした。

それに対して歳出の総額は、一般会計だけでも9600億円です。

東京新聞さん、解りますか?

3650 − 9600 = マイナス5950億円

令和2年度の川崎市はマイナス5950億円分を、約3500億円の国庫支出金(国のカネ)、ほか市債発行や諸収入によって財源を賄っています。

それでも川崎市は、昨年度は交付税の「不交付団体」でした。

つまり地方自治体は「地方交付税交付金」以外をすべて自主財源で賄っているわけではないのです。

それを東京新聞は「地方交付税は自治体が自主性の高い財政運営をしているかを示す目安だ」とやる。

均衡ある国土の発展を実現していくには、国家による地方自治体間の財政調整が不可欠です。

その財政調整の手段の一つが、まさに「地方交付税交付金制度」です。

本来であれば、すべての自治体が交付税の「交付団体」になるべきなのですが、正しい貨幣観をもたぬがゆえに国は財源に制約をつけています。

地方交付税交付金の総額は、なにも地方財政の放漫度で決定しているわけではありません。

もしかすると東京新聞はそのように解釈しているのかもしれませんが…

地方交付税交付金の財源は、所得税、法人税、酒税、消費税となっています。

ゆえに交付金の総額は、その年の所得税、法人税、酒税、消費税、地方法人税の税収で決まります。

厳密に言うと、所得税・法人税の33.1%、酒税の50%、消費税の19.5%が地方交付税交付金の総額になります。

くどいようですが、地方自治体の財政事情によって総額が決定しているわけではありません。

景気が低迷し税収が減れば総額は減り、景気が上向いて税収が増えれば総額も増えます。

ただそれだけです。

因みに、上のグラフをご覧のとおり、小泉内閣の構造改革以来、地方交付税交付金の総額は大幅に減っています。

このように総額に税収的上限があるからこそ、国は交付団体と不交付団体に分けているだけです。

国が定義する「基準財政収入額」を、同じく国が定義する「基準財政需要額」を上回ればその自治体は「交付団体」となり、下回れば「不交付団体」となります。

コロナ禍の自粛経済により景気が低迷すれば市税収入は減り、当然のことながら基準財政収入額も減ります。

それでもなお、市民の命を守り、市民の暮らしを守るためには自治体として収支を悪化させてでも歳出を拡大しなければなりません。

ゆえに結果として今年度は本市も「交付団体」になっただけの話です。

それを「転落」と揶揄する新聞社がいるのは誠に残念です。

もしかして東京新聞は「市民生活を犠牲にしてでも転落するな!」と言いたいのでしょうか。