政治家は言葉を大切にしなければならない。
そもそも、議会とは「言論の府」なのですから、用いる言葉がデタラメでは建設的な議論など不可能です。
ところが、言葉の定義を不明確にしたたまま、あるいは理解しないままに安易な定義で政策論を口にして憚らない増上慢な輩が多い。
川崎市議会にも大勢います。
例えば、教育行政おいてよく使われる「権利」「自由」「尊厳」などの言葉にもそれぞれ定義がありますが、その定義をきちんと理解したうえで発言している議員などほとんどいない。
だから大抵の場合、その種の議員たちからはデタラメな教育論が展開されます。
あるいは、国会中継をみていても、「このままでは日本の富が奪われていく…」などと言っている国会議員が時折おられますが、「日本の富」の意味を全く理解しないままに安易に発言しているのがよくわかります。
「日本の富」すなわち「国富」にも明確な定義があります。
国富とは、①生産資産、②有形非生産資産、③対外純資産、の三つです。
①の生産資産は、政府の公共事業や民間企業の設備投資や住宅投資によって形成された固定資産のこと。
②の有形非生産資産は、土地、地下資源、漁場など、人間の手によって形成することのできない有形資産のこと。
③の対外純資産は、その名のとおり「対外資産から対外負債を引いた額」で、プラス化したら純資産、マイナス化したら純負債となります。
例えば昨今でも「トランプ関税で貿易赤字が拡大すれば、日本の富が益々奪われるぅ〜」と警鐘を鳴らされている人たちもいますが、そもそもトランプ関税がなくとも、近年、我が国の貿易収支は既に赤字になっています。
ところが上のグラフのとおり、たしかに日本の貿易収支は赤字でも、我が国は莫大な対外資産を保有していることから、そこから上がる所得(配当金や利息などの第一次所得収支)もまた莫大で、そのことがなおさら対外純資産を増やすという拡大循環を構築しています。
ちなみに、我が国の対外純資産額は既に3,300,000百万USドルを超えており、世界第1位の対外純資産国です。
ダントツです。
要するに、貿易収支の赤字が続いたところで、わが国の世界第1位である対外純資産はびくともしないのでございます。
言い方を変えますと、目下わが国は、格差とコストプッシュ・インフレにより国民が貧しくなる一方、国全体としては世界一のカネ持ち国家という不思議な状況になっています。
そうした事実を理解していない人たちが、「日本の富がぁ〜」と言って無責任に危機感を煽っているわけです。
まるで、財政破綻論と同じ構図です。