そば粉の値段が上がっています。
我が国は、そばの実の輸入の7〜8割を中国産に依存しており、その値段が上がっているからです。
中国産そばの実は3月現在で45キロあたり7,400円(前年比3割増)となり、統計可能な1997年依頼の最高値をつけています。
このことを受け、製粉最大手の日穀製粉は3月に、中国産原料を使ったそば粉の値段を1キロ70〜75円程度引き上げました。
とりわけ、割安な中国産原料のそば粉を使用している立ち食いそばチェーンなどは、仕入れ値が上がることで経営が圧迫されるのは必至で、やがて値上げにつながることと思わます。
立ち食いそばの常連ユーザーでもある私にとっては、まこと困った事態です。
なぜ中国産そばの実の値段が上がっているのかというと、実は米中対立が背景にあります。
中国は、トウモロコシや大豆など米国に依存している穀物の国内生産量を引き上げるために、農家に補助金をつけてそれらの栽培面積を拡大しています。
そばの実は荒れ地に強く栽培しやすいというメリットもあるのですが、トウモロコシや大豆や稗や粟に比べ手取り収入が少ないことから、そばの実の栽培面積が縮小されているようです。
また、もう一つの値上げ要因は、そばの実の生産量、消費量ともに世界第一位のロシアがコロナ禍により輸出を停止したことで中国への流通量が減少したことです。
中国もまたロシアからの輸入に大きく依存していたのです。
因みに、そばのつなぎに使われる小麦の値段も上がっています。
輸入小麦粉の値段は昨年の4月から5.5%も上昇しています。
2月に発生した米国での寒波の影響で更に値が上がることが予想されます。
このこともまた、おそばの値上げ要因です。
現に、日本全国で展開している大手そばチェーンの『ゆで太郎』は5月以降の値上げを検討しているとのことです。
江戸時代、いわゆる「二八そば」(そば粉8割、小麦粉2割のそば)の値段は16文で、現在のインフレ率でいうと300円程度だったといいます。
なるほど、たしかに現在においても立ち食いそばチェーンで「かけそば」を食べると、ちょうど300円ぐらいです。
今後、この値段が上がっていくのは必定です。
米中対立の行方は未だ不透明であり、ワクチン接種が世界的にも進んでいるとはいえコロナパンデミック終息にはもう少し時間を要すことから、値上げは一時的なものとはならず長期的なものになりそうです。
よく「国際政治など庶民には関係ない…」という人たちがおられますが、私たちが何気なく食しているおそばでさえ国際政治の影響を受けているのでございます。
私たち庶民にとっての政治とは、「無関心」であっても決して「無関係」ではいられない、そういう存在です。