日本経済を凋落させた学問

日本経済を凋落させた学問

堀江貴文氏がSNS上で間違った理論を吹聴しています。

「減税すると物価が上昇し、却って国民生活を苦しくする…」と。

おそらく堀江さんは、インフレにはデマンドプル型とコストプッシュ型の二種類のインフレがあることをご存じないのだと思われます。

もしも現在の物価上昇が、旺盛な需要が供給力を牽引するデマンドプル型(需要過多)の物価上昇であれば、堀江さんの見立ては正しい。

おっしゃるように減税政策は国民の旺盛な需要に更に拍車をかけることになりますので、ますます物価は上昇することになります。

しかしながら、現在のインフレはデマンドプル型ではなく、需要は増えていないのに輸入物価の高騰により物価が上昇するコストプッシュ型インフレです。

だったら政府がやるべき経済対策は、①減税、②所得移転系の給付措置(定額給付金など)、③電気代やガソリン代を引き下げるための補助金しかありません。

わが国は実体経済(実質GDP)の成長力が弱いなか、すなわちデマンドプル型インフレでもないのに、財務省に唆されて消費税率の引上げという増税策を行ってきた恐ろしい国です。

この30年にも及ぶ日本経済の凋落の原因はそこにあります。

きっと堀江さんも残念ながら財務省に洗脳されているのでしょう。

そういえば、元財務官僚がテレ朝の『ビートたけしのTVタックル』で堀江さんと全く同じことを言っていました。

財務省の手口はこうです。

政府(内閣)の審議会、例えば財政制度等審議会や経済財政諮問会議などに主流派経済学者らの御用学者を入れて、「日本は財政状況が厳しいから、緊縮財政(財政収支の縮小均衡=増税=歳出削減)が必要だ」という結論に導かせることです。

現に、緊縮財政を正当化するプライマリー・バランス(以下、PB)黒字化目標などは、選挙で選ばれた政治家が決めているわけではなく財政諮問会議で決定され、それを閣議決定することで最終的に政治家が法的に決定したことにしています。

ゆえに、PB黒字化目標がある以上、どのような経済状況下でも「減税は悪…」となります。

ご承知のとおり現在、政府の経済財政政策に最も大きな影響を与えている学問が「主流派経済学」です。

しかし残念ながら、主流派経済学は科学的な学問ではありません。

そもそも経済活動には貨幣供給(=財政赤字)が必要不可欠なのですが、主流派経済学が基礎とする「一般均衡理論」が想定する経済は物々交換の世界であり貨幣経済を想定していません。

それだけでも実に恐ろしい事態なのですが、主流派経済学が説く「自由貿易論」の論拠となる「比較優位の原理」が想定するのは、「この世界には二国、二財、一つの生産要素(労働)のみが存在し、常に完全雇用で運送費はゼロ」というあり得ない世界です。

要するに、非現実的な仮定がなければ論理として成立しない学問なのです。

批判ついでに言わせてもらえば、主流派経済学は「投資」「生産性」「信用創造」という、現実経済にとって重要な三つの要素を無視しています。

もう一つ、主流派経済学は「政府」という存在を嫌うのをご存知でしょうか。

その理由は「政府が巨額の支出を決断したり、あるいは増税したり減税したりすると、経済人による自由な競争市場が歪められるから…」というものです。

主流派経済学が政府に財政均衡の縮小均衡(緊縮財政)を求めるのは、このためです。

わが国では、こんな〇〇げた学問に基づき間違った政策が長きにわたり遂行され、国民経済はここまで凋落してしまったのでございます。