現在の比じゃない、高度経済成長期の人手不足

現在の比じゃない、高度経済成長期の人手不足

昨年(2024年)、わが国の出生数は72万988人となり、9年連続で過去最少を記録しました。

総人口は14年連続で減少、子供の減少に至っては44年連続で減少中です。

イーロン・マスク氏からは「このままでは、日本は消滅するぞ」と心配され、ユニクロの柳井正氏は「人口が減って栄えた国はない。移民政策をしないと日本は国そのものが滅んでしまう…」と提言されています。

石破首相も「いずれアジア諸国も人口減少時代を迎える。今、移民政策をする体制をつくらないと我が国自体の持続可能性が問われる状況になりうるのではないだろうか…」と言っています。

とはいえ、「人口減少を食い止めるには移民を増やすしかない…」という考えは、あまりにも浅はかで短絡的で、かつ知恵が無さすぎます。

巷にも「移民を入れないと人手が足らない…」と愚痴をこぼす経営者が大勢いますが、1955年から1973年頃までの「高度経済成長期」の人手不足は現在の比ではありませんでした。

例えば、現在の失業率は2.5%ですが、高度成長期の失業率は1%強で完全雇用状態でした。

令和6年12月の有効求人倍率は1.25倍ですが、高度成長期後半の有効求人倍率でさえ、1970年が1.61倍、1971年が1.29倍、1972年が1.51倍、1973年が2.14倍だったのです。

それでいて移民の受け入れはゼロ。

あの時のわが国は、政府も企業もとにかく投資、投資、投資。

公共投資、設備投資、人材投資、技術開発投資などなど、とにかく生産性向上のための投資を行うことで人手不足を解消しつつ、一人あたりの実質GDPを増やしていったのです。

そして、豊かになっていく過程で、日本の人口は年平均1.6倍のスピードで増えていきました。

そこが大事な点で、人口が増えたから(足りない労働力を移民で補ったから)経済成長したのではなく、経済成長したからこそ人口が少しずつ増えていったのです。

これが高度経済成長の正体です。

当該ブログでも再三申し上げておりますが、私が移民受け入れに反対するのは、「移民を受け入れると我が国固有の文化が破壊され、治安が悪化するから…」という理由だけではなく、むしろ人口減は経済成長のチャンスであると考えているからです。

そもそも「人口増=経済成長」と言うのであれば、アフリカ諸国の多くは既に経済大国になっていなければおかしい。

それに、人口が減少しているのは日本だけではありません。

中国をはじめ、東アジア諸国では今、急速な少子化に伴い生産年齢人口(15〜64歳人口)比率が低下しはじめています。

中国、韓国、台湾、香港の合計出生率は既に1%を切っており、日本よりも低い。

その理由の第一は、近代化と都市化が急速に進んだことの社会的な歪と言われていますが、これらの国々もまたやがて深刻な人手不足を招くことになるでしょう。

ゆえに、少なくともこれらの国々からの移民受け入れは期待できません。

因みに、国連が2001年に発表した研究においても「移民は人口減少の緩和には役立つが、人口の高齢化を相殺し、高齢になった移民も含めた扶養率を維持するには、あり得ないほど大量の移民が必要で、非現実的だ」とされています。

要するに、仮に今、移民受け入れによって労働力を補ったとしても、30〜50年後にはその移民たちは高齢者となり生産年齢人口から外れることになります。

そして今度は、彼ら彼女らが高齢者福祉を必要とする側にまわるわけです。

その人たちに「高齢者になったら自分の国にお帰りください…」とでも言うのでしょうか。

実際、現在のヨーロッパは、この自転車操業のようなシステムから抜け出すことができず、「これ以上移民を受け入れたら、社会が維持できない…」とまで言われるほどです。

まさに「終わりなき負のスパイラル」に陥っているわけです。

ヨーロッパは移民によって、古代ローマ帝国に続いて2度めの崩壊を迎えようとしているとさえ言われています。

移民受け入れによる労働力補完政策が、いかに愚かな道なのか理解すべきです。