憲政史上、私が最も尊敬する政治家は、なんといっても田中角栄先生です。
通常、歴史上の人物に「先生」をつけることはしませんが、つい32年前までご存命だった偉大なる政治家をどうしても呼び捨てにすることなどできません。
むろん巷には、角栄先生に対する様々なご批評があることでしょう。
政治家の偉業には、偉業であるがゆえに功罪はつきものです。
よく「田中政治の金権体質が罪だ…」と言われますが、仮にそれが「罪」であったとして、角栄政治の「功」の大きさはその比ではなかろうに。
国会で碌な仕事もせず、ごもっともらしく駅頭に立ち、お祭りや盆踊りで愛想を振りまいているだけの現代の国会議員のほうが余程に罪深い。
さて、角栄先生といえば、1962年に蔵相に就任した際の演説が大好きです。
東大卒のエリート官僚たちを前にして次のように挨拶されました。
「私が田中角栄だ。小学校高等科卒業である。諸君らは日本中の秀才代表であり、財政金融の専門家ぞろいだ。私は素人だが、トゲの多い門松をたくさんくぐってきて、いささか仕事のコツを知っている。一緒に仕事をするには互いによく知り合うことが大切だ。われと思わん者は誰でも遠慮なく大臣室に来てほしい。何でも言ってくれ。上司の許可を得る必要はない。できることはやる。できないことはやらない。しかしすべての責任はこの田中角栄が背負う。以上」
これを聞いた大蔵官僚たちは鳥肌が立ったという。
「できることはやる」「できないことはやらない」「全ての責任はこの田中角栄が背負う」
今となっては、このような挨拶のできる大臣や首長は皆無でしょう。
むろん、石破総理、あるいはどこぞやの市長と比べては角栄先生に大変失礼ですし、石破や某市長にもわるい。
一方、角栄先生といえば、国会議員として33本もの議員立法を成立させたことでも有名です。
最近知って驚いたことですが、いま話題となっている「高額療養費制度」も角栄先生が生みの親だとか。
ガソリン税の暫定税率が角栄先生のご立案だったことはよく知られているところですが、角栄先生はあくまでも「暫定的に」税率を設定されたのであって、これを暫定とせず継続してきたのは大蔵省(現・財務省)に媚びへつらって手をつけてこなかった自民党の責任です。
もっとも、石破がセコイのは、国会という公の場で国民民主党と「暫定税率の廃止」を約束したにもかかわらずこれを平然と反故にし、高額療養費の方ではちゃっかり国民負担を増やそうとしていたことです。
しかも国民の不満が高まったことを受け、自民党の幹部連中から「これでは参議院選挙で勝てないからやめろ…」と言われ、結局は高額療養費には手をつけませんでした。
どれだけクズな内閣なのか。
現在の経済状況を考えれば、どうみても手をつけるべきは高額療養費ではなく、ガソリン税(暫定税率)の方だろうに。
因みに、石破が10万円の商品券を新人議員におみやげとして配ったことが問題になっていますが、受け取った新人議員が「これはやばい…」と思ってマスコミにリークしたらしい。
これについても「田中政治以来の自民党の悪習」として批判を受けています。
しかしながら、もしも角栄先生なら、相手が誰であれ人に疑問や不信を与えるような渡し方はしない。
仮に100円であっても、相手にとっては10万円、100万円の価値があるような渡し方をして大いに感謝されるのが田中角栄先生です。