つい最近までは、おカネ(資金繰り)に困って倒産閉業する事業者が多かったわけですが、近ごろではおカネはあるのに人手不足によって閉業に追い込まれてしまう事業者が増えています。
あまり使いたくない用語ですが、「労働市場」は完全に売り手市場です。
すなわち、職を求める人よりも、人を求める事業者のほうが圧倒的に多い状態です。
といっても、高度成長期(1960〜73年)は現在よりももっと売り手市場でした。
現在の転職率(入職率・離職率)は15〜16%ですが、高度成長期のそれは23〜25%で推移していました。
要するに当時の労働者としては、仕事はほぼ選び放題だったわけです。
だからこそ当時の日本企業は人を抱え込むために「終身雇用」のほか、各種の福利厚生を充実させていったわけです。
とりわけ、終身雇用は日本社会に分厚い中間所得層を構築し、それが内需を牽引することでさらなる企業投資を促しました。
結果、投資による生産性向上が実質賃金を押上げ続けたのです。
ちなみに、川崎重工などは売上高の3倍に値する額の借金をして、生産性向上のための投資をしていたほどです。
高度経済成長は、このようにして成し遂げられました。
昨日のブログでも申し上げましたが、まさに「人手不足」こそが高度経済成長の原動力だったと言えます。
もしも「人手不足は移民で…」などとやっていたら、あの奇跡的な高度経済成長など絶対に在り得なかったことでしょう。
上のグラフのとおり、わが国の高度経済成長は主要先進国のなかでもずば抜けていました。
例えば、西ドイツの折れ線グラフをみますと、当初は9%以上の成長率を有し日本以外の先進国を圧倒していたのですが、1955年以降からは右肩下がりとなり最終的には4%程度の成長率に落ち込んでいます。
なぜか?
西ドイツは、1955年ごろからトルコ系の労働移民を受け入れたからです。
それがなければ、日本並に高い成長率を維持できたことでしょう。
繰り返しますが、わが国は労働力不足を、移民という低賃金労働力で埋めることなく、企業投資による生産性向上によって埋めたのです。
ゆえに、私が移民受け入れに反対するのは経済政策として間違っているからであって、けっして排斥などではありません。