昨年10月に発行された『Newsweek』(2020/10/20号)の表紙は、実にセンセーショナルなものでした。
そのタイトルは、科学後退国ニッポン。
内容は、2020年に日本人のノーベル賞受賞者がゼロだったことは決して偶然でなく、やがて日本からノーベル賞受賞者が消えるだろう、というものでした。
実は2017年にも英国のネイチャーが「やがて日本は科学大国からずり落ちる」という特集をやっていました。
その際、危機感を覚えた何人かの科学者たちがこのネイチャーの記事をもって何人かの与党国会議員に予算増額の陳情に行ったらしいのですが「もう科学技術費は増やせない」と言われたという。
上のグラフのとおり、主要国政府の科学技術予算の推移からも、我が国が「科学後退国」に凋落せざるえない理由が伺えます。
因みに中国の2018年時点での科学技術予算総額を1990年時点のそれと比較すると、なんと68倍になっています。
もともと発展途上国でしたので当然と言えば当然の話なのですが、それでも68倍という伸びは驚異的です。
2018年時点で日中比較(OECD購買力平均)をすると、中国は日本の6.4倍になっています。
人口10万人あたりの博士号取得者数をみても、米国、ドイツ、韓国はそれぞれ着実に増やしていますが、なんとは日本は減らし続けています。
例えば日本では、2008年には131人の博士号取得者がいましたが、2017年は119人と落ち込んでいます。
韓国は2008年には191人の博士号取得者がいましたが、2017年には284人にしています。
日本の引用される論文の比率も落ち込んでいくばかりで、米国の『Science』などでは「不正論文の半分は日本人によるものだ」と言われている有様です。
さて、ここまで日本の科学者を追い込んだのは他ならぬ日本政府です。
もっと言えば、財務省と財務省に洗脳された与党議員たちです。
彼らがプライマリーバランス(基礎的財政収支)の黒字化などという馬鹿げた財政運営を行っているがゆえに、科学技術費はもちろんのこと、競争力に直結するあらゆる投資が抑制され、我が国は没落の坂を転げ落ちているのです。
何度でも言います。
主権通貨国である日本政府に深刻な財政問題など存在していません。
GDP成長率は、財政支出(国債発行残高)の伸び率と極めて相関性が高いことが既に統計的にも証明されています。
にもかかわらずこの20年間、我が国政府は一貫して国債発行を抑制し、「無駄」という抽象的かつ曖昧な概念のもとに理不尽な事業選別を行い歳出を抑制してきました。
かつて科学技術予算について「2番じゃダメなんですか?」と問いかけた国会議員がいましたが、もはや2番どころの騒ぎじゃない。
もしかすると、吉野彰さんが日本人最後のノーベル受賞者かもしれない。