目下、政局混迷中の韓国ですが、韓国国防省は11日、北朝鮮情勢などについて国会に報告しました。
当局によれば、北朝鮮はロシアに対し、ミサイルや200余りの長距離砲などを供与し、その見返りとしてICBM(大陸間弾道ミサイル)や原子力潜水艦などに関する先端技術をロシアから受け取る可能性があるとのことです。
ロシア・ウクライナ戦線に約1万1,000人の北朝鮮兵士を派遣するほか、相当な量の弾薬を供与することで、ロシアから先端の軍事技術を手に入れるというわけです。
今後の平壌の出方については、ことしは「国防5か年計画」の最後の年にあたるため、ロシアの支援を受けつつ、さらなる核・ミサイル技術の向上を図るのではないかと分析しているようです。
ソウルにとっても正念場です。
今や平壌は、核兵器で米国の都市をも威嚇するほどの力をもっています。
そのため、自国を攻撃されるリスクを払ってでも米軍が米韓同盟のコミットメントを守ってくれるかどうかが疑わしい。
現にトランプ米大統領は、これまで米韓同盟を強く批判してきました。
トランプ政権下で朝鮮有事が発生した場合、米軍が率先的に介入する可能性は低いのではないでしょうか。
そこがソウル首脳部の悩みの種でしょう。
一方、北朝鮮国防省も11日、米国原子力潜水艦の韓国への寄港は「重大な安全保障上の脅威だ」と指摘し、「北朝鮮軍は必要な行動を取る用意がある…」と表明しています。
仮に紛争になれば平壌は米軍の介入を抑止するため、まっさきに米軍の軍事拠点に対する核攻撃を警告するはずです。
日本国内の米軍基地(国連軍基地を含む)はもちろん、グアム、ハワイ、アジア太平洋の米軍基地が脅かされ、次いで米国本土が脅かされることが推測されます。
当然、米軍の韓国支援の潜在的コストは高くなり、ワシントンが介入に躊躇することは十分に考えられます。
とはいえ、圧倒的に通常兵力に劣る北朝鮮としては独力で米韓軍を半島から追い出すことは不可能でしょうから、当然のことながらロシアによる直接的な軍事支援が必要になります。
斎藤道三という後詰がいたからこそ、織田信長は桶狭間で存分に戦えたのと同じように。
ただ、現在のロシアはウクライナとの戦争遂行が優先です。
ロシアが朝鮮半島に介入するには、ウクライナとの戦争がロシアが承認できる条件で収束していなければならないでしょう。
北京はどうか。
第一次朝鮮戦争では積極的介入でなく、義勇軍としての参戦という少し腰の引けた対応でした。
当時の満洲にはソ連軍がいましたが、今は中国の北部戦区です。
ロシア軍が介入するにも、豆満江国境から入る以外は北京の協力を得なければ海路に回らなければならなくなります。
現在、北京と平壌との関係は芳しくないと仄聞しますし、台湾侵攻が優先されるなか国内経済が落ち込んでいるため、北京としても北朝鮮がもたらすリスクには慎重にならざるを得ないでしょう。
以上のような観点から、ソウルの政局があのような状況にありつつも、平壌が今すぐに果敢な軍事行動にでる可能性は極めて低く、韓国国防省の見立て通り、さらなる核・ミサイル技術の向上を図るものと推察します。