事実ベースで思考する力

事実ベースで思考する力

1月28日に開かれた参議院の代表質問において、石破総理は「(SNSの偽情報が)深刻な課題だ」と答弁しました。

これを受け政府は、5月までにSNS上で広がる偽情報や中傷などを防ぐ指針をまとめることになりました。

しかし、これは極めて危うい言論統制につながりかねない。

たしかにSNS上には真偽の怪しい、あるいは明らかなデマ情報(偽情報)が散見されますが、それらを誰がどういう基準で「偽情報」と判断するのでしょうか。

例えば、財務省が喧伝している「日本政府の財政破綻論」は明らかな「偽情報」であり、これもSNS上で広範にわたり拡散され続けています。

当然、これも偽情報の対象となるのでしょうね。

逆に「日本政府の財政破綻(日本国債のデフォルト)はあり得ない」という真っ当な情報が「偽情報」に認定されたりはしないのか。

あるいは「通貨発行権を有する政府にとって税は財源ではない」というのも正しい情報ですが、この種の財務省にとって都合の悪い情報が「偽情報」とされてしまう危険性はないのでしょうか。

現に、財務省派と言っていい野田毅(元税制調査会長、旧大蔵省出身)は、SNS上で財務省への中傷や批判コメントが急増したことについて、「日本社会がフェイク(偽情報)にどんどん流されている。そういったものが支配するようになったら、日本は潰れる。むしろ『財務省頑張れ』という声が出るべきだ」と発言しています。(出典『毎日新聞』)

こういう手合は自民党にゴロゴロいます。

ちなみに、指針策定と同時に選挙におけるSNSの利用規制も議論されるようです。

昨年は東京都知事選挙での石丸候補の躍進、そして衆議院総選挙においてもSNSが選挙に与えた影響が特に大きかったため、こうした動きになっているものと推察します。

とはいえ本来、SNS上の情報の真偽を判定するのは政府ではなく、一義的には国民であり有権者でなければならない。

ゆえに国民には、真実を見極める力、事実ベースで思考する力、すなわち情報リテラシーが求められるのもまた事実です。

であるからこそ、以下のオルテガの言葉を噛み締めたい。

「大衆とは、良い意味でも悪い意味でも、自分自身に特殊な価値を認めようとはせず、自分はすべての人と同じであると感じ、そのことに苦痛を覚えるどころか、他の人々と同一であると感ずることに喜びを見出しているすべての人のことである」

オルテガ、偉大なり。