2週間前、米国バイデン政権が、法人税の国際最低税率構想を打ち出しました。
これまで、1980年代以降から続いてきたグローバリズム体制下においては、国内に多国籍企業を誘致し、あるいは引き止めるには「法人税はできるだけ引き下げるのが望ましい」とされてきました。
結果、各国は法人税率の引き下げ競争に走りつつ、その代わりに消費税率を引き上げてきました。
つまり各国は、企業負担を減らした分を国民負担を引き上げることで穴埋めしてきたわけです。
あるいはタックスヘブン(租税回避地)と呼ばれる「法人税などの税率を意図的に低くする国や地域」に売上を計上することで恩恵を受けてきた多国籍企業は多い。
とりわけハイテク業界と製薬業界は世界的に租税回避の恩恵を最も受けてきた2大産業と言っていい。
知的財産権はどこにでも好きな場所に移すことができるので、そこを営業の拠点としてきました。
例えば、Googleは英国に税金を納めていません。
Googleは英国での売上を拡大してきましたが、その売上を税率の低いアイルランドに移し計上することで法人税負担を回避しています。
こうしたハイテク大手など多国籍企業の租税回避を防ぐために、バイデン米政権は法人税の国際最低税率構想を打ち出したわけです。
バイデン米政権の提案は、ハイテク大手など多国籍企業らが各国から得ている収入に比例して法人税を課すというものです。
例えば、Appleが収入の1割をフランスで得た場合、フランスはその1割に法人税を課すことが可能になります。
こうしたことから今回のバイデン米政権の提案は特に欧州各国からは大きな支持を得ているようです。
オバマ政権時代にも法人税率の引き上げに挑戦しようとしましたが、当時は未だGoogle、Facebook、Amazonなどのハイテク大手の圧力と反発が強く実現には至りませんでした。
なお米国民もまた、それらハイテク大手の味方でした。
米国民の多くは、Amazonで買い物をし、Googleで検索し、Facebookで情報を発信するなどして生活を謳歌していたからです。
しかし、バイデン政権となった今、世間の風向きはだいぶ変わりました。
とりわけハイテク大手に対する国民の認識は厳しい。
今日では、Facebookは政治のプロセスを腐敗させ、Amazonはメインストリートの多くの店舗を倒産に追い込み、Googleはデーターの保護に大きな課題を抱えていることから、米国民の多くがハイテク大手が社会に与える影響を問題視しています。
一方、租税回避の恩恵を受けてきた2大産業のひとつである製薬業界は新型コロナ問題によって評価が一気に高まりました。
その製薬業界にバイデン米政権がどれだけ強くでられるか疑問視する声もありますが、いまや政治の追い風は大統領側にあるようです。
1980年代から続いてきたグローバリズムが、ようやくその終焉にむけて動き出しました。
待ちに待った、グローバリズムの終わりのはじまりです。