諸悪の根源はPB黒字化目標

諸悪の根源はPB黒字化目標

多くの人たちは思いも寄らないでしょうが、世界には財政健全化を目指して破綻した国があります。

アルゼンチンとギリシャです。

いつも言うように、家計や企業にとっての赤字と、政府にとっての赤字とでは、その意味は大きく異なります。

ですが、それを理解できない人たちが財政健全化を主張しており、残念ながらそうした意見がマジョリティです。

ご承知のとおり、財政健全化の典型的指標がプライマリー・バランス(基礎的財政収支、以下PB)で、これが黒字化すれば財政は健全、赤字化すれば不健全…というのが財務省など健全財政派の主張です。

PB(基礎的財政収支)とは、政府が支出する政策経費(社会保障費、防衛費、教育費、公共事業費等々)を税収だけで賄えているかどうかを示すものです。

因みに、公債費(国債償還費と利払費)のうち、利払費をも税収で賄え、というのが「財政収支」です。

なので「財政収支の黒字化」は、PBの黒字化よりもはるかに厳しい健全化指標となります。

実は財務省は、「PB黒字化目標」よりも更に厳しい健全化指標である「財政収支の黒字化目標」に切り替えようと目論んでいます。

さて、恐るべきことにアルゼンチンとギリシャは、PBを黒字化するために「緊縮財政(歳出カットと増税)」に真面目に取り組み、その目標を達成する過程で景気が悪化し、税収が減り、かえって政府財政を厳しくしてしまったのです。

景気の良し悪しは、政府の歳出規模に依存するわけですから、PB黒字化を目指し財政支出を引き締めれば、当然のことながら景気は失速します。

それでもアルゼンチンやギリシャが「PB黒字化」を目指さなければならなかったのは、それがIMF(国際通貨基金)から融資を受ける条件だったからです。

とはいえ、実は「PB」と「財政破綻」は関係がありません。

関係があるのは、国債が自国通貨建てなのか否かのみです。

すなわち、PBが黒字であっても国債発行が自国通貨建てでなければ財政は破綻(デフォルト)しますし、どんなにPBが赤字であっても国債が自国通貨建てであれば破綻しません。

アルゼンチンの国債はドル建て、ギリシャの国債は共通通貨ユーロ建てで、要するに自国通貨建てによる国債発行でなかったためにデフォルトしたのです。

言うまでもなく、わが国の国債は100%自国通貨(円)建てです。

よって、破綻(デフォルト)など100%あり得ません。

にもかかわらず、しかもIMFの管理化にあるわけでもないのに、自発的にPB黒字化目標を設定し自国の財政を縛り付けています。

これがいかに愚かなことか、おわかりになるでしょうか。

現にPB黒字化目標が、さまざまな政策遂行の妨げになっています。

毎年6月に閣議決定される『骨太の方針』のなかにPB黒字化目標」が盛り込まれ、これが財政健全化の法的根拠になっています。

この馬鹿げた目標を破棄しないかぎり、わが国の再生ははじまらない。