政府の地震調査委員会は、南海トラフ巨大地震(マグニチュード8~9程度)の30年以内の発生確率について、これまで「70~80%」としてきましたが、去る1月15日に「80%程度に引き上げた」と発表しました。
ご承知のとおり、地震調査委員会は毎年1月1日、日本周辺の海溝や全国の活断層で想定される地震の発生確率を計算し、必要に応じて更新・発表しています。
南海トラフ巨大地震の発生確率は2013年から出され、この時は未だ「60~70%」でしたが、2014年には「70%程度」、2018年には「70~80%」に引き上げられてきました。
今回再計算した結果、「75~82%」という数字が出たため「80%程度」との表現にしたらしい。
発表の際、平田委員長は「(80%程度とは)いつ起きてもおかしくない数字だ」と述べられ、引き続き「地震への備え」を強調されました。
「30年以内…」と言うと、「あまりにも期間が長すぎてピンと来ない…」と思われる方々もおられるようですが、地質学的にはほぼピンポイントな予測数値です。
むろん、南海トラフ巨大地震のみならず、首都直下型地震やら、富士山の噴火やら、あるいはそれらが全て連動して発生する可能性さえ否定できない状況にありますので、自然災害大国のわが国においては防災対策(防災インフラの整備)は喫緊の課題です。
とはいえ、国土強靭化法が制定されて久しいものの、そのために付けられている予算は僅かばかりで、「国土強靭化」は未だ絵に書いた餅状態です。
防災インフラどころか、老朽化した上下水道管の更新さえ満足に進んでおらず、昨日のブログでも申し上げましたとおり、耐用年数40年を超えている水道管比率は20%を超えています。
こうしたお粗末な状況をもたらしている最大の理由は、言うまでもなく政府や地方自治体の「緊縮財政」(財政収支の縮小均衡)にあります。
控除額を引き上げるにも、何をやるにも「財源がぁ〜」となります。
結局、財源論に陥る人は「貨幣とは何か」を理解できていない人で、貨幣を理解できないままに財政や経済を論じるのは、血液とは何かを理解できていない医者が外科手術に臨むのと同じです。
血液を理解できない人は、そもそも医者にはなれないでしょうが、選挙にさえ当選すれば貨幣を理解できなくとも議員や首長になれるから恐ろしい。
貨幣とは何か、という本質を理解できると、経済のなかで「赤字」というものがもつ真の意味がよく理解できます。
貨幣が経済の中を流通するためには、政府や自治体などの公的部門、そして企業や家計などの民間部門が債務を負って支出をしていなければなりません。
すなわち、「赤字」という存在がなければ、資本主義経済そのものが成立しないのでございます。
特に、総需要不足とコストプッシュ・インフレに見舞われている現在の日本経済には、政府による赤字拡大が求められています。
なのに政府は「赤字」を悪とし、債務を負わず支出をしない。
このままではわが国は、財源で滅びるのではなく、赤字を悪とする財源論で滅びそうです。