効率性の追求が非効率を生む

効率性の追求が非効率を生む

行きつけのコンビニに、いつの日からか「セルフレジ」が設置されていました。

ただ、セルフレジを利用されている人を、あまり見かけたことがありません。

私も2〜3度ほど使ったことがありますが、最近ではどんなに混んでいても有人レジを利用しています。

スーパーやコンビニはレジの効率化や利益アップのためにセルフレジを導入したのでしょうが、現在ではそのメリットよりもデメリットのほうが大きいことが判ってきたため、有人レジに戻す企業が増えているようです。

ユニクロのセルフレジなどは成功しているように思えますが、スーパーやコンビニからは消滅するのではないでしょうか。

米国が世界に誇る超大手スーパーであるウォルマートもセルフレジの数を減らし、再び有人レジに戻しているらしい。

英国のスーパーマーケット大手であるブースも、「セルフレジは遅い…」「冷たい感じがする…」との顧客からの苦情を受け、ほぼ全ての店舗(28店舗)でセルフレジを廃止したとのことです。

また、米国で約19,700店舗を展開している大手ディスカウントチェーンのダラー・ゼネラルが、セルフレジの費用対効果(効率化と利益率アップ)を検証したところ、明らかに割に合わぬことが証明されたことによりセルフレジを廃止しています。

やはり、セルフレジにしてから売上が下がってしまったようです。

その理由一つは、万引きが多いことです。

小売店に万引きは付きものとはいえ、ことのほか海外では日本以上に万引きが多いらしい。

日本でさえ、セルフレジ以前に比べ万引き件数が20倍以上に増えてしまった店舗もありますので、おそらくは日本など比較にならないぐらいの被害があったのかもしれません。

その手口は様々で、同じ商品を二つ持ちつつ、一つだけしかスキャンしないケースのほか、安い商品だけを何度もスキャンし、高額な商品はスキャンせずそのまま袋に入れて総額を減らすケース、あるいは平然とレジをスルーしてしまうケースなども報告されています。

そのため、一人あたりの購入点数に制限をかけたらしいのですが、すると今度は売上が減ってしまう。

こうした万引きが横行すると、「セルフレジを使う人≒万引き犯」というイメージが強くなりますので、故意ではない万引きを疑われるぐらいなら最初からセルフレジを使用しないほうがいい、というお客さんも増えたようです。

結果、減らされた有人レジに長蛇の列ができ、そのことによりまた客離れが進む、という悪循環に陥ってしまったとのことです。

それに、購入点数を制限されては何度も買い物に来なければならず、大いなる手間です。

要するにセルフレジにした結果、万引き被害は増え、売上も落ち、客離れが進んでしまったわけですが、これらの話は効率性を追求した結果、かえって非効率を生んでしまう、という典型的な事例です。

このことは、マックス・ウェーバーが既に100年前から警鐘を鳴らしていたことであって、今さら驚かされることでもありません。

川崎市の福田市長は、職員への念頭挨拶で、役所のマンパワー不足を解消するために「効率化の徹底」を求めたらしい。

組織に対して「効率化の徹底」を求めることこそ、まさに社会科学の素養のないリーダーが陥りがちな罠です。

大切なことは、人件費を惜しむことなく、正規職員として雇用し続け経験を積ませ、優秀な人材(公僕)に育て上げることです。

そうした組織風土をつくりだすことは、必ず川崎市民の利益につながります。

「人手補足でカネもないから、なるべく無人化しよう…」というリーダーは、国民の命を預かる行政には要らない。