毎度おなじみですが、上のグラフは、財務省が常にホームページに掲載している「国民の皆さん、日本の借金を諸外国と比べると大変でしょっ!」グラフです。
なお財務省はこのグラフを見せつつ、次のように2つの注釈をつけています。
①財政の持続可能性を見る上では、税収を生み出す元となる国の経済規模(GDP)に対して、総額でどのくらいの借金をしているかが重要です。
②日本の債務残高はGDPの2倍を超えており、主要先進国の中でも最も高い水準にあります。
要するに財務省は「債務残高の対GDP比率が一番高い日本は、もっと歳出を抑制しなきゃダメでしょ」と言いたいわけです。
朝日新聞の天声人語じゃないけれど、「ちょっと待ってほしい・・・」。
債務残高 ÷ GDP = 債務残高対GDP比率
であるならば、分母であるGDPを大きくすればいいんじゃないのか。
狡猾なる財務省は、先進諸国の中で日本のGDPだけが「この20年間にわたり全く成長していない事実」を伝えようとしません。
むろん、意図的に。
財務省に媚びるマスコミもまた然りです。
ではなぜ日本のGDPだけが成長していないのか?
日本だけがデフレ(総需要の不足経済)だからです。
なぜデフレなのか?
政府が総需要不足を埋めるために歳出拡大政策を採らないからです。
それどころか財務省は、国民に対し政府債務残高の大きさを強調することで「財政健全化(歳出削減)」を正当化してきたのです。
結果、現在の日本は次のようなサイクルに陥っています。
デフレでGDPが増えない → GDPが増えないから税収が増えない → GDPと税収が増えないから債務残高対GDP比率が拡大していく → 国民に対して財政健全化(歳出削減)の必要性を説く → 歳出削減が続きデフレ化が進む
ご承知のとおり、財務省の健全財政の尺度は例によって基礎的財政収支(プラマリーバランス、以下PB)です。
コロナ危機にある現在にあっても財務省は、なんと国と地方を合わせたPBを2029年までに黒字化しようとしています。
財務省のみならず、PB黒字化目標を正当化する人たちは「PB赤字化は長期金利とインフレ率を押し上げ、国を破綻させる」と言い続けてきましたが、下のグラフのとおり現実は全く逆の結果をもたらしています。
昨年はコロナ対策等もありPB赤字が68兆円まで拡大しましたが、実際にはインフレ率も長期金利もともに低水準です。
時系列でみても、PB赤字が続いていても長期金利は低迷し続けており、インフレ率が上昇したのは消費税増税(5%→8%)した2014年だけです。
日本政府の財政が破綻する以前に、財務省の言う「財政破綻論」そのものが既に破綻しています。
それから、ぜひ財務省に訊いてみたい。
財務省は冒頭のグラフを使って「日本の債務残高対GDP比率だけが諸外国に比べ突出している」と言うけれど、だったら日本はなぜに破綻(デフォルト)しないのか?