「r」の代弁者!?

「r」の代弁者!?

今から7年前、トマ・ピケティはその著書『21世紀の資本』において「資本収益(金融経済)で得られる収入の伸び率がGDP(実体経済)で得られる所得の伸び率を上回りつづけると、計り知れない格差がもたらされる」ことを膨大なデータを示して証明しました。

いわゆる、r > g です。

r =資本収益、g =GDP

r > g とは…

ざっくり言えば、コツコツ働き付加価値(モノやサービス)を生産して稼ぐ人たちよりも、株や為替や土地のほか各種の金融商品を売り買いして稼ぐ人たちのほうが豊かになる、という意味です。

世界を見渡せば、多くの人たちが「r」ではなく「g」(GDP)によって生計を立てています。

即ち、人口的には「r」で稼いでいるのはほんの数%の人たちであって、圧倒的多数の人々は「g」による所得を稼いでいます。

例えば公務員や民間の経営者だって「g」から所得を得ている人たちであることを忘れてはならない。

なお、世界の r>g 化を決定的にしたのは、国境を無くし、ヒト・カネ・モノが大量かつ自由に世界を駆け巡ることを是としてきたグローバリズムです。

だからこそトマ・ピケティは「グローバリズム」そのものに警鐘を鳴らしてきたわけです。

因みに「r」で稼ぐ人たちは政府による財政出動とインフレが嫌いで、デフレと緊縮財政が大好きです。

政府が財政支出を拡大させ(デフレを脱却させ)GDP成長率を高めることはGDPで稼ぐ国民にとっては大きな利益なのですが、それによりインフレ率が上昇することは「r」で稼ぐ彼ら彼女らにとっては許せないことなのです。

なぜならインフレ率の上昇は彼らの彼女らが保有する金融資産の価値を下落させるからです。

しかしながら、実体経済の成長優先をめざすならば、マイルドなインフレ率の上昇は欠かせない。

そもそも勤労所得よりも不労所得が優先されるような社会では長続きはしないし、GDP成長と累進税率とを組み合わせることで分厚い中間所得層を形成することができれば社会は安定し、国内の生産能力は高まり国民としての一体感も強まります。

これを国力という。

ゆえに本来、世の中のは常に、r < g でなければならない。

コロナ禍にあるにも関わらず、米国では2020年に株式と不動産市場が回復したことで富める者がより豊かになりました。

米国FRB(連邦準備制度)が公表した家計資産の四半期調査によれば、最も裕福な世帯上位1%は2020年に資産を約4兆ドル(約435兆円)増やしたとのことです。

約435兆円は全米増加分の約35%に相当し、下位50%の世帯では全体の約4%分(約5兆円)しか増えませんでした。

超富裕層に最大の富の増加をもたらしたのは保有していた株式と土地とのことです。

皮肉にも新型コロナ・パンデミック(世界的大流行)によって、貧富の格差は一段と顕著になりました。

これを受けバイデン米政権は、高所得者層を対象とする『富裕層増税』を固く決意したようです。

悲しいかな日本のメディア報道を見ておりますと、国民経済(GDP)の動向よりもインフレ率の上昇下落のほうがよほどに気になるようです。

日本の政治もメディアも、どちらかというと「r」の代弁者なのか !?