1月24日に召集が予定されている通常国会の焦点の一つは、言うまでもなく「年収の壁」問題です。
昨年末、自公与党は、国民民主との3党合意で「178万円を目指して控除額を引き上げる」ことを約束し、国民民主党はそれを信じて補正予算案に賛成しました。
ところが補正予算が衆議院をなんなく通過したのち、自民税調会長の宮沢洋一(もはや敬称はいるまい)なる財務省の手先議員がしゃしゃりでてきて「178万円なんてふざけるな…」と言う。
宮沢は(もはや敬称などいるまい)、強引に「123万円までの引き上げ」を税調案として取りまとめ、石破内閣は税制改正大綱を閣議決定してしまいました。
国民民主党としては裏切られた格好となっていますので、おそらく通常国会は序盤から波乱含みでしょう。
なにせ少数与党ですから、野党の協力を得なければ石破内閣は何一つ法案を通すことができません。
ここにきて維新の吉村代表も「178万円までの引き上げ」に賛同する意向を示しているらしいから、それがもし本当であれば与党としては厳しい状況に追い込まれます。
国民民主も維新もダメ、「だったら立憲民主党に…」と言うわけにもいかないでしょうから。
因みに、川崎市議会の維新は昨年末の定例会で『所得控除の引き上げを求める意見書案』に反対しています。
国会の維新が「引き上げ」に賛成するのであれば、なぜ川崎市議会の維新は反対したのか、その理由を明らかにしてほしい。
吉村代表(維新)が「178万円の引き上げ」の支持に回ったとすれば、それはおそらくは7月の参議院選挙を見越してのことでしょう。
参議院選挙は、会期の延長がなければ公職選挙法の規定などにより7月20日となる予定です。
このまま「与党の補完勢力」というレッテルを貼られたままでは、維新は7月の参議院選挙でもまた勝てない、と踏んだのだと思われます。
さて、宮沢洋一ら財務省派(緊縮財政派)は日本経済新聞を含め、所得控除の引き上げ問題を「インフレ対応策」にすり替えようと必死です。
宮沢が引き上げ額を「123万円」にした根拠も、インフレ率(物価上昇率)に合わせたものです。
1月2日付けの日本経済新聞の記事にも「年収の壁を見直す背景にはインフレがあります」とあります。
国民民主党は先の総選挙以来、「手取りを増やす」ことを公約に掲げ、実質賃金の引き上げを求めていますが、それは必ずしもインフレ率が上昇したからということではありません。
そもそも、コストプッシュ・インフレ以前から、わが国の実質賃金は下がり続けています。
国民民主党が「178万円への引き上げ」を求めている最大の理由は、憲法で保証されている生存権の問題です。
1995年に財務省がはじきだした「103万円」の算定根拠は明らかに「最低賃金」にあり、生存権の観点からそこに税を課してはならないと考えられています。
最低賃金は1995年以来すでに1.73倍となっており、それを根拠にすると年間所得で「178万円」ということです。
だから「ここに税を課すのはおかしい!」と主張してます。
この点、日本共産党などはもっと指摘すべきだと思うのですが、なぜか日本共産党は強く主張しない。
もう一つ、多くの国民が懸念するのは財源論でしょう。
引き上げ反対派たちも、その点をことさらに強調します。
言うまでもなく、財源は国債でいい。
自国通貨建ての国債発行は単なる通貨発行にすぎず、事実上、返済不要の債務です。
それでも心配だ、という方にお見せしますが、一応は政府の財政力を示す国際的な基準として「ネットの利払費(対GDP比)」なるものがあるのですが、上のグラフのとおり、わが国のそれは先進国のなかでも極めて低い数値となっています。
仮にこれが悪くなっても問題などないのですが…
よって、財源の心配など御無用です。