移民政策の問題点

移民政策の問題点

昨年(2023年)、わが国の出生数は72万7,277人となり過去最少を記録し、総人口は13年連続で減少しています。

なお、子供の減少に至っては、43年連続で減少中です。

こうしたなか、イーロン・マスク氏にまで「このままでは、日本は消滅するぞ」と心配をされているわけですが、この事態に、わが国の政財界のリーダーたちが「唯一の希望…」としている秘策が「移民政策」です。

例えば、ユニクロ創業者の柳井正氏は「人口が減って栄えた国はない。移民政策をしないと日本は国そのものが滅んでしまう…」(2015年11月21日付 産経新聞)と言っていますし、現在の総理大臣である石破茂氏も「いずれアジア諸国も人口減少時代を迎える。今、移民政策をする体制をつくらないと我が国自体の持続可能性が問われる状況になりうるのではないだろうか…」(2017年4月1日付 日本経済新聞)と言っています。

しかしながら、「人口減少を食い止めるには移民を増やすしかない…」という考えは、あまりにも浅はかで短絡的で、かつ知恵が無さすぎます。

私が移民受け入れに反対するのは、「移民を受け入れると我が国固有の文化が破壊され、治安が悪化するから…」という理由だけではありません。

そもそも私は「人口減少=経済衰退」とは考えておらず、、むしろ人口減は経済成長のチャンスであると考えているからです。

例えば、5人の子供がいる家庭と、1人しか子供がいない家庭があったとします。

お父さんやお母さんの稼ぎは共に同じぐらい。

この場合、どちらの家庭のほうが子供一人あたりに多くの教育費を投資できるでしょうか。

答えは明白で、子供が少ないほうが教育にかけるリソースを集中させることができます。

結果、進学率は向上し、高度な教育を受けた若者の割合が増えることになります。

少ない人口のなかでも、人材投資、公共投資、設備投資、技術開発投資等々、各種の投資を拡大することにより、一人当たりの生産性を向上させることが可能であり、一人当たりの生産性を向上させることを「経済成長」といいます。

1960年代の高度経済成長期(1968〜1973年)、我が国の人口増加率(平均)は、たったの1.6%でした。

1.6倍ではなく、1.6%です。

むろん、この時期、労働力は既に不足状態でした。

しかし、足りない労働力を移民で補うことなく、ひたすら生産性能の向上で補ったからこそ「高度経済成長」を成し遂げることができたわけです。

つまり、人口減少は経済成長のチャンスであるのに対し、移民受け入れは、この絶好のチャンスを潰すものです。

もしも「人口増=経済成長」と言うのであれば、アフリカ諸国の多くは既に経済大国になっていなければおかしい。

それに、気づけば日本は世界第4位の移民大国になっていますが、それでも経済は成長していません。

経済界が移民政策を求める理由は明白で、単に「低賃金労働者」を雇いたいからです。

いわゆる「底辺の競争」により利益を上げ業績を伸ばしてきた企業や経営者は特に、その傾向が顕著です。

本音は自分や会社の利益のためなのに、それをあたかも「これからの日本のために…」と言うのはいかがなものか。

もう一つ、移民政策には大きな落とし穴があります。

それは、ヨーロッパの行き過ぎた移民政策の問題点を鋭く分析しているダグラス・マレー氏が指摘しているように、「移民もまた、やがて高齢化する」ということです。

たとえ今、移民を受け入れ労働力を補ったとしても、30〜50年後にはその移民たちは高齢者となり生産年齢人口から外れることになります。

そして今度は、高齢者福祉を必要とする側にまわるわけです。

その人たちに「高齢者になったら自分の国にお帰りください…」とでも言うのでしょうか。

言えませんよね。

その結果、少子高齢化は今よりもさらに深刻化し、また新たな移民を受け入れなければならなくなります。

因みに、国連が2001年に発表した研究においても「移民は人口減少の緩和には役立つが、人口の高齢化を相殺し、高齢になった移民も含めた扶養率を維持するには、あり得ないほど大量の移民が必要で、非現実的だ」とされています。

実際、現在のヨーロッパは、この自転車操業のようなシステムから抜け出すことができず、「これ以上移民を受け入れたら、社会が維持できない…」とまで言われるほどです。

まさに「終わりなき負のスパイラル」と言っていい。

川崎市が策定した『川崎市多文化共生社会推進指針』には、そうした視点は皆無です。

https://www.youtube.com/watch?v=CmXSDvj40h8