利上げの対象となるインフレ、ならぬインフレ

利上げの対象となるインフレ、ならぬインフレ

あさって、日銀は金融政策を決める会合(金融政策決定会合)を開きます。

会合のポイントは利上げするかしないかですが、市場関係者らの間には「追加利上げに踏み切るのでは…」という見方が多いようです。

しかしながら、おそらくは利上げできないと思います。

というか、すべきではない。

既に日銀は「経済と物価が見通しどおりに推移すれば追加の利上げを検討する…」という方針を示しているものの、日銀内にも「トランプ次期大統領の政策の影響や賃上げの動きを見極めるべきだ…」という意見が多いらしい。

11月22日に公表された10月の消費者物価指数をみますと、生鮮食品を除く総合指数(コアCPI)は108.8で前年同月比2.3%の上昇、生鮮食品及びエネルギーを除く総合指数(コアコアCPI)は108.1で前年同月比2.3%の上昇でした。

ともに前年同月比で2.0%を上回っていることから、「追加利上げすべきだ…」と言う人もおられますが、このように言う人たちの多くがインフレには2種類あることを考慮していません。

一つは、デマンドプル・インフレ。

もう一つは、コストプッシュ・インフレ。

高インフレは、需要が実物資源の供給制約を上回った場合に発生します。

そのうち、需要が実物資源の供給制約を上回った原因が、「需要の増大」にある場合が、前者のデマンドプル・インフレです。

例えば、景気が良くなって人々の消費需要が盛んになり、企業が銀行からおカネを借りまくって投資して生産量を増やす。

すると、実物資源の供給が追いつかなくなって物価が上昇するというケースです。

これに対し、需要も企業の生産量も増えていないのに、実物資源の供給制約がより厳しくなったことで発生するインフレが後者のコストプッシュ・インフレとなります。

例えば、1970年代のオイルショックのときのように、産油国が原油の輸出を制限したためにエネルギー価格が上昇してインフレになった場合はコストプッシュ・インフレとなります。

今日のように為替安による輸入物価の高騰に伴うインフレもまた同様です。

中央銀行が利上げの対象とするインフレは、むろんデマンドプル・インフレです。

といって、2〜3%程度のデマンドプル・インフレなら、必ずしも利上げしなければならないわけでもありません。

なにせ高度成長期の日本のデマンドプル・インフレは5%前後もありました。

現在のわが国のインフレは(といっても2〜2.5%程度だが…)デマンドプル型ではなく、コストプッシュ型です。

すなわち、利上げの対象となるインフレではありません。

コストプッシュ・インフレを克服するために必要なのは、実物資源の供給制約を緩和するための財政政策、すなわち産業政策ですが、その効果がでるまでにはタイムラグが生じます。

その間、生活者や事業者が物価高騰やコスト高に苦しまぬよう、政府はあらゆる財政措置を講じる必要があります。

例えば、水道代や光熱費を補助するための給付手当や、ガソリン価格を引き下げるための補助金などがその一例です。

要するに、政府支出の拡大が求められます。

国民民主党が求めている年収の壁を引き上げることもまた、当然のことながらコストプッシュ・インフレ対策になります。