米国の歴史学者及び国際関係学者であるハル・ブランズ氏と、政治学者であるマイケル・ベックリー氏の共著『デンジャー・ゾーン 迫る中国との衝突』によれば、2020年代こそ米中新冷戦の最も危険な時期(デンジャー・ゾーン)だという。
そして彼らは、中国の台湾戦争は2025年1月と予言する。
この書籍が書かれたのは、たしか昨年の8月ごろだったと思いますが、ことし11月には大統領選挙が行われ来年1月にはトランプ政権に変わるなど、情勢は日々変貌していることもあり「2025年1月侵攻説」がズバリ的中するかどうかはわかりません。
ただ、彼らの予言は占いもどきの怪しいものなどではありません。
むろん、きちんとした学術的な根拠に基づいたものであり、実に興味深いものです。
ネタバレになるので詳しくは書けませんが、とりわけ説得力をもつのが彼らの言う「ピークアウト理論」です。
それは「第一次世界大戦、第二次世界大戦も、共に台頭する新興国の経済成長が止まり、その指導者層が将来を悲観しはじめたときに勃発した」というもので、「覇権挑戦国は、国力がピークにあるうちに軍事的な目標を達成しようとする」ともいっています。
なるほど、第一次世界大戦は、当時の覇権国(イギリス)に対し、覇権挑戦国(ドイツ)が挑んだことで勃発しています。
第二次世界大戦もまた、その延長ではじまっています。
ドイツの経済成長がピークを迎え、「あれっ、このままではイギリスに追いつけないぞ…」と、ドイツの指導者たちが将来を悲観したときに、「今なら、まだ間に合う」と判断して戦争に踏み切ったというわけです。
第二次世界大戦時、石油を止められ国力が疲弊しはじめた大日本帝國もまた、米国に対し宣戦布告したのは「今ならまだ戦える」という判断があってのことでした。
要するに、覇権挑戦国の成長がピークアウトに差し掛かったときこそが危機であると。
すなわち、習近平をはじめ、現代の覇権挑戦国である中国の指導者たちが「このままでは米国に追いつけないぞ」と悲観したときが、台湾侵攻を決断させるときであるとしています。
なるほどたしかに、中国における各種経済統計は、中国経済がピークアウトにあることを示しています。
上のグラフのとおり、鉄道貨物輸送量もそうですが、ほかにも電力消費量、産業エネルギー消費量、粗鋼生産量などが頭打ちとなっています。
そういえば昨日も閣議で、「日米地位協定第2条に基づく施設及び区域の一部返還、共同使用及び追加提供について」が閣議決定されています。
去る11月5日にも同様の閣議決定がなされており、霞の目飛行場、朝霞駐屯地、健軍駐屯地、鹿屋飛行場などの陸上施設が追加提供され、海上演習場関係として日向灘訓練区域が新規に提供されています。
今年に入って同閣議決定が頻繁になされていますが、迫る台湾有事に備えてのことでしょうか。