嘘をついてでも緊縮財政を正当化したい財務省

嘘をついてでも緊縮財政を正当化したい財務省

わが国の財政法(第4条)は、政府の国債発行について次のような縛りをかけています。

「国の歳出は、公債又は借入金以外の歳入を以て、その財源としなければならない」

但し、「公共事業費、出資金及び貸付金の財源については、国会の議決を経た金額の範囲内で、公債を発行し又は借入金をなすことができる」と。

すなわち、公共事業費、出資金、貸付金の財源については、国会の議決を条件に例外を認めるけれど「これら以外の借金は絶対にダメ!」だと。

もう少し平たく言うと「建設国債は認めるけれど、赤字国債はダメ」ということです。

とはいえ、実際には赤字国債を発行することなく国家運営などできませんので、政府は毎年のように「特例公債法」という法律をつくって赤字国債を発行してきました。

以前は、毎年、同法を国会で通していましたが、それも面倒くさくなったらしく、最近では何年かに一回にまとめて国会で議決しています。

たしか来年度あたりが更新年だったと記憶しています。

さて、財政法の4条、あるいは5条を読めばわかるとおり、財政法はまさに「緊縮法」と言っていい。

緊縮法が施行されたのは、我が国がGHQの占領下にあった昭和22年、つまり日本国憲法(占領憲法)が施行された少し後のころです。

緊縮法(法案)が国会に提出された際、当時の所管課長(大蔵省主計局法規課長)の平井氏は財政法第4条について次のように答弁されています。

「戦争と公債がいかに密接不離(=密接不可分)の関係にあるかは、各国の歴史をひもとくまでもなく、わが国の歴史を見ても公債なくして戦争の計画遂行の不可能であったことを考察すれば明らかである。公債のないところに戦争はないと断言しうるのである。したがって、本条(財政法第4条)はまた、憲法の戦争放棄の規定を裏書き保証せんとするものとも言いうる」

この発言の前半の部分は確かにそのとおりです。

例えば、戦争になりました…「じゃぁ、軍備を整えるために増税をしましょう」なんていう国などありません。

どこの国でも普通に国債を発行し支出することで戦争を遂行します。

なので、たしかに戦争と公債は密接不可分です。

しかしながら、「公債のないところに戦争はない」というのはさすがに意味不明です。

現に、わが国は1965年以降から赤字国債を発行していますが、一度たりとも戦争状態に突入したことなどありません。

もしかすると、「赤字国債さえ発行しなければ、外敵から侵略されることはない」とでも言いたいのでしょうか。

そうであれば「占領憲法9条さえあれば平和だぁ〜」という人たちと同様の「お花畑思想」ですね。

なお、「公債を発行すると金利が上昇してインフレになるぅ〜」というイメージをお持ちの方々もおられますが、1946年の日本のインフレ率が600%ぐらいにまで上昇したのは、本土爆撃を受け国内の供給能力が破壊された結果です。

すなわち、平井氏のように「軍事支出に伴う巨額の財政赤字(政府債務)による通貨の膨張が戦後のハイパーインフレをもたらした…」と喧伝する人たちは嘘つきです。

そもそも、ハイパーインフレの定義は、年率13,000%以上の物価上昇であって、600%のインフレはハイパーインフレとは言いません。

ところが、財務省が財務相の諮問機関である『財政制度等審議会』で配布した資料には、まさにこの種の嘘が以下のように平然と記載されています。

①第二次世界大戦時の巨額の軍事費調達のために多額の国債が発行された結果、終戦直後にハイパーインフレーションが発生した。

②政府はインフレ対策と債務削減の観点から「預金封鎖」「新円切替」「財産税」「戦時特別補償税」などの対策を講じたために、国民の資産も犠牲になった。

③こうした教訓に基づき、財政法上、「非募債主義(第4条)」や「国債の日銀引受禁止(第5条)」が定められた。

これら①②③が、財務省が財政法(緊縮法)を正当化している理由です。

何度でも言います。

戦時に国債が発行されたのは事実ですが、「国債発行がハイパーインフレをもたらした」という事実も根拠もありません。

現実を見てほしい。

2013年以降、日本銀行は500兆円以上もの国債を買い取っていますが、マネーサプライは一向に増えず、インフレ率も上昇せず、ひたすらデフレに苦しんできました。

コストプッシュ型インフレに見舞われたのはコロナ・パンデミックが終息して以降です。

財務省は「公債発行とインフレ率の因果関係」について、納得のいく説明をしたことがありません。