川崎市役所のメインバンクは横浜銀行です。
横浜銀行は、情報開示・IR支援大手がベトナムに置いている現地法人と業務提携をするらしい。
東南アジア市場は横浜銀行の取引先企業に最も人気の高い海外進出先とのことですので、当該市場を牽引するベトナムの現地法人との業務提携は先々のことを見越してのことでしょう。
その背景には、我が国の地銀が海外需要に目を向けねばならない程に国内の資金需要が萎んでいることがあるのではないでしょうか。
上のグラフのとおり、ここ数年、我が国の市中銀行の店舗数(支店数)は減少傾向にあります。
むろん、人口減少や地方の過疎化の影響もあるのでしょうけど、やはり30年近いデフレ経済によって倒産廃業した事業者も多いでしょうし、需要不足経済の中では新たな投資を行う事業者も少ない。
長期停滞の中で資金繰りに苦しむ事業者は増えても、市中銀行は担保がなければ資金繰り目的のカネなど貸さないし、需要の見込みのない事業に融資することもないでしょう。
さて、いつも言うように、市中銀行は預金者から集めたおカネを又貸しして融資をしているわけではなく、無から預金を創出しておカネを貸出しています。(これを信用創造という)
いわゆる万年筆マネーです。(通帳に万年筆で金額を書くだけ)
現代では、キーボードマネーと言った方が正確でしょうか。
銀行側が、貸出し先の事業者の通帳に「〇〇〇〇円」とキーボードで打ち込むだけで貸出しは成立します。
貸出しを受けた事業者は、現金で引き出すのも良し、銀行預金のまま取引先に振り込んでも良し。
通貨発行権は政府(日本銀行)にあるものの、このようにみますと実は市中銀行も通貨(預金通貨)を発行していることがわかります。
これをニコラス・カルドは「内生的貨幣供給理論」と呼びました。
なるほど、経済活動の中から貨幣が生み出されて市場に供給されるがゆえに、内生的貨幣供給と言うわけです。
すなわち、誰かが借金をしなければ、この世に貨幣は創出されないのでございます。
一方、経済がデフレ(総需要の不足)化すると、当然のことながらおカネを借りる人が少なくなりますので銀行の貸出し機会は減ってしまいます。
つまり貨幣が供給されない。
結果として、おカネの価値が上がり、財やサービスの値段が下がります。
財やサービスの値段が下がると、売り上げが減り、給料(実質賃金)が減り、さらに需要が減ります。
するとまた、銀行貸出しが減ることになります。
これをデフレスパイラルと言いますが、我が国はこれを27年間も続けています。(コストプッシュ・インフレは少し落ち着いてきました。)
我が国では、ことし7月まで過去20年以上にわたって金利は超低水準が続き、ほとんどゼロになりましたが、それでも市中銀行は貸出し先を見つけられないでいます。
横浜銀行のように、地銀がベトナムの現地法人と業務提携しなければならないほどに…
第二次世界大戦後の先進資本主義諸国は、世界恐慌(世界的な大デフレ経済)の反省を踏まえて、デフレだけは回避しようと努めてきました。
そのため、戦後の先進資本主義諸国はインフレになったことはあっても、デフレになることはありませんでした。
戦後、唯一、デフレに陥ったのは我が日本国だけです。
しかも未だに脱却できないでいます。
解決策は一つです。
デフレ脱却に至るまで、政府が借金をして需要を創出するほかない。
そのことは結果として、コストプッシュ・インフレ対策にもなります。