日本の衰退を前提にダウンサイジングする川崎市の愚かさ

日本の衰退を前提にダウンサイジングする川崎市の愚かさ

水の確保は、私たち国民生活にとって安全保障の根幹です。

かねてより川崎市は意外にも水源に恵まれていて、お隣の東京都様に日量10万トン以上もの原水を供給しているほどです。

といって私ども川崎市民は多摩川の水は一滴も飲んでおらず、水源は相模川上流の相模湖、津久井湖、そして酒匂川上流の丹沢湖、中津川上流の宮ヶ瀬湖、これら4つの湖から供給されています。

ちなみに日本の生活用水の80%は軟水ですが、川崎市の水道水は硬度が約40mg/Lから70mg/L程度の軟水です。

ところが、ところが…

水源(原水)は豊富なのですが、愚かなことに川崎市は平成24年に潮見台浄水場を廃止、つづく平成28年には生田浄水場を廃止し、川崎市として日量98万9,900トンあった給水能力を日量75万8,200トンへとダウンサイジング(規模の縮小)してしまったのです。

このダウンサイジングは節水技術の普及や人口減少に伴う需要減退を見越してのことですが、これほど愚かなことがあろうか。

一旦失われてしまった供給能力(ヒト、モノ、技術)を取り戻すのにどれだけの時間と労力を要すると思っているのか。

というか、それこそ人口減少に伴う人手不足から人材的確保が困難となりますので、失われた供給能力を取り戻すのは二度と不可能となる可能性のほうが大です。

技術は人材に付随しますので、そもそも技術継承が困難となります。

しかも生活上水だけではありません。

なんと川崎市は工業用水も、これまでの日量52万トンから日量37万トンにダウンサイジングする予定で、その条例はすでに先日の川崎市議会において賛成多数で可決されています。

所管の環境委員会での審議で私は真っ向から反対の論陣を張りましたが、川崎市の職員は「市内の企業様に今後の需要見込みのアンケートをとったら、現在の供給能力を維持するのは明らかに無駄だ」と言いやがった。

企業はこれまでの需要(過去平均の需要)、及び今後予測される経済動向から需要見込みを算定するものと思われます。

我が国はこの30年間にわたりデフレ経済でしたので、おそらく多くの企業は「今後もデフレがつづくもの…」という前提で水需要を算定しているはずです。

そこで、見ていただきたいのは上のグラフです。

日本の産業部門エネルギー消費量の推移ですが、ご覧のとおり、我が国がデフレ経済に突入した1997年以降から減少傾向に入っていることがわかります。

我が国の人口が減り出したのは2010年ごろからですので、企業の水需要やエネルギー消費量が減っているのは人口減とはほとんど関係がありません。

意外に思われるかもしれませんが、高度成長期の日本の人口増加率はわずか1〜2%程度でした。

人口が増えなくとも経済は成長しますし、経済成長に伴い企業の水需要やエネルギー消費量は増えるのでございます。

つまり、多くの企業が「これまでも日本経済はデフレだったから、今後もデフレだろう」とみなして水需要やエネルギー消費量の予測を立てているとしたら、川崎市はデフレ経済下の需要予測を前提に工業用水のダウンサイジングをしてしまうことになります。

というか、これ以上、デフレ経済が常態化してしまったら、わが日本国の衰退は免れません。

すなわち、川崎市は日本の衰退を前提にダウンサイジングをするわけです。

これを愚かと言わず、なんと言うのでしょうか。

行政計画というものは、国の発展を前提にするものではないでしょうか。