輸入木材などの原材料価格が高騰しています。
その背景には、新型コロナがもたらした世界情勢の変化による需要の高まりがあります。
例えば輸入木材の高騰については、とりわけ米国での需要急増が大きい。
米国では新型コロナの感染拡大を機にリモートワークが普及し、郊外への移住や一戸建てを建てる人が増えたことなどで木材の需要が急増しています。
この急増により、材木取引価格(先物)がこの1年間で4倍にも跳ね上がったという。
さらには、いち早く経済活動を再開した中国でも材木需要は旺盛となっているほか、欧州でも木材需要は堅調に推移していることから木材をめぐって世界的な争奪戦が起こっています。
しかも世界的なコンテナ不足に伴う海上運賃の値上がりもまた輸入材の不足に拍車をかけています。
そうしたなか、建築向け木材のおよそ5割を輸入材に依存している日本の業者が完全に買い負けしているのが実状のようです。
一方、米欧中での建材やフローリング材の需要の高まりは、家具向けの木材の仕入れ価格にも影響を与えています。
家具向けの木材も昨年と比べ既に3割ほど高騰しています。
家具メーカーは作業の効率化や材料の無駄をなくすなどの経営努力を行いコスト削減に取り組んでいるようですが、今や商品価格に転化せざるを得ない状況に追い込まれているようで、7月に価格改定を予定しているメーカーもあります。
家具を買う予定のあるかたは、お早めに購入されたほうがいいかもしれません。
それから原材料価格の高騰は歯の治療にまで及んでいます。
歯の治療に使う銀歯の中にはサビ防止のためにパラジウム(約20%)が含まれているらしく、そのパラジウムの価格が高騰しています。
パラジウムの国際取引価格をみますと、1年間でおよそ1.6倍に上昇しています。
パラジウムは自動車から排出される有害物質を取り除く装置にも使われており、世界的な排ガス規制の流れを受けて需要が増大しているらしい。
むろん、新型コロナの影響で落ち込んでいた自動車の生産が回復基調にあることも影響していることでしょう。
また、今年の2月、世界有数の生産地であるロシアの鉱山での浸水被害が発生し、それに伴う供給減が価格高騰に拍車をかけているようです。
知り合いの歯科医師にお尋ねしたところ、銀歯治療では詰め物で0.5グラム程度、大きな被せ物で2.5ぐらむ程度のパラジウムを使用するらしく、それだけで何千円も変わるということでした。
今後もパラジウムの高騰が続けば、銀歯の治療費も値上がりします。
新型コロナ以降、生活する上で欠かせなくなった「マスク」についても再び懸念する事態が発生しています。
昨年、感染拡大が深刻化しはじめた際、店頭から一斉にマスクが消えたことは記憶に新しいことと存じます。
国内に流通するマスクの8割を中国など海外からの輸入に依存していたことが要因です。
その後、国内マスクメーカーが政府の微々たる補助制度を使うなどして相次いで増産に乗り出したことから、今では豊富なほどに店頭にマスクが並んでいます。
ところがここにきて、冒頭のグラフのとおり再び国内での生産量が落ち込んでいます。
なるほど近所のドラッグストアー、あるいはコンビニやスーパー等の店頭に並んでいるマスクをみると、その箱や包装には「MADE IN CHINA」と記載されていることに気付かされます。
経済活動を再開した中国から再び輸入マスクが流入しています。
店頭から国産マスクが消えつつある最大の理由は、中国産の価格のほが半分ちかくも安いからです。
即ち、単位労働コストの安い中国産マスクに国産マスクが駆逐されているということです。
国内メーカー及び国内の流通業者は既に大量の在庫を抱えていることから、ある国内メーカーなどは「このままだと生産設備を縮小せざるを得ない」としています。
この状況について記者から質問を受けた田村厚労相は「何らかの検討をしたい」と答えるにとどめ、具体論を示すことができずにいます。
しかしながら、国内メーカーに一定の生産能力を保持させるためには政府が介入するのは当然のことであり検討の余地などないはずです。
まずは政府が国内メーカーのR&D投資を支援することで技術革新を促し、単位労働コストを引き下げさせる。
単位労働コストの引き上げに成功するまでの間、国内メーカーが生産能力を維持することを条件に、発生した在庫マスクについては政府がこれを買い上げ全国の医療機関に無料で配布すればいい。
医療資材は消費財ではなく公共財です。
もしも厚労大臣が検討したまま何もせずいたら、再び国内流通の8割を中国に依存することになります。