石破内閣で総務大臣に就任した村上誠一郎氏は、中世から戦国期にかけて瀬戸内海で活動した海賊衆である村上水軍の末裔らしい。
村上誠一郎氏といえば、奈良県で凶弾に倒れた安倍元総理の葬儀の際、安倍さんのことを「国賊」と批判されていたのが印象的です。
一般的に海賊はある種の強盗団であるため、その末裔に「(国)賊呼ばわり」された安倍さんも、さぞかしあの世で苦笑しているにちがいない。
国賊とは「国に仇する賊」というものの、この概念は際限なく広がりますので、何をもって国賊とするのかの定義は定まっていません。
私に言わせれば政治の世界における国賊とは、少なくとも占領憲法を憲法として崇める敗戦利得者はことごとく国賊であり、それには護憲論者はもちろん、改憲論者も含まれます。
その意味では既存政党すべてが国賊政党ということになりますが、田中角栄先生のように総理大臣として敗戦体制からの脱却を試みた国士も個々にはおられます。
そういえば安倍元総理も第一次安倍内閣発足当時は「戦後レジームからの脱却」を唱えておられましたが、第二次安倍内閣以降はそれを封印し、挙句の果てには「現行憲法(占領憲法)に自衛隊の明記を加えよう」という加憲論者(改憲論者)に転向されておりました。
その意味では村上誠一郎氏の言うとおり「国賊」かもしれませんが、私に言わせれば村上氏だって敗戦利得者のお一人、もしくは末裔でしょうに。
ただ安倍さんの場合、内心においては私と同じように占領憲法(現行憲法)の無効論者であったと拝察しますが、政治的戦略もあって、やむを得ず一旦は加憲論者となったのかもしれません。
それを表明できないままお亡くなりになってしまったのでしょう。
そもそも一つの国家が独立国家となるためには、次の三つが必要です。
①自前の憲法、②自前の国防軍、③自前の情報機関(防諜法に裏付けられ統合された国家情報機関)
ご承知のとおり、現行憲法(占領憲法)は自前の憲法ではありません。
昭和20年、我が国は帝国憲法に基づいて連合国に降伏し、帝国憲法に基づいて占領政策を受け入れ、そして帝国憲法に基づいて昭和27年に占領政策を終わらせたのです。
よって、現行憲法は帝国憲法第76条第1項の無効規範の転換理論によって講和条約の限度でその効力を認められるものであり、憲法としては無効とされなければならない。
多くの人たちが誤解されていますが、「自前の憲法」というのは、これから新たに創るものではありません。
憲法とは創られた法ではなく、確認された法です。
例えば英国では「法の支配」の考え方により、憲法は存在せず、憲法的(コンスティテューショナル)なものは、祖先から受け継いだ法、発見された法という理解になっています。
よって我が国においては、古事記、日本書紀、五か条の御誓文、教育勅語、帝国憲法などの「複文」によって祖法が認識されなければならないのです。
村上国務大臣には理解できないかもしれませんが…
とにもかくにも、他人様を国賊呼ばわりする際には、まずは「国賊」の定義を明確にしてから批判すべきです。