IIF(国際金融協会)が9月25日に「グローバル債務モニター報告書」を発表しました。
報告書によると、ことし6月時点での世界の政府債務残高が92兆ドル(約1.3京円)となり過去最大を更新したとのことです。
それを日本経済新聞が「IIFは各国の政府債務が今後急拡大するリスクに言及した…」と嬉しそうに報じています。
因みに、日本経済新聞は「貨幣とは何か」を知らずに平然と財政経済を論じる新聞社ですので補足しますが、この地球上に債務(負債)だけを一方的に増やすことのできる経済主体は存在しません。
債務(負債)の裏側には必ず債権(資産)がありますので、各国の政府債務が増えた分、それだけ資産を得た人たちが必ず地球のどこかにいることをまずは理解しなければならないと思います。
なお、自国通貨建てで国債を発行している国にとっては、債務残高は通貨発行残高にすぎません。
これらの国は政府債務を税金で返済する必要はなく、会計上は返済している形式をとりますが実質的には借り換え(ロールオーバー)の連続です。
国内の供給能力(モノやサービスをつくる力)が許す限り、あるいはインフレ率の制約が許す限りにおいて永遠に借り換えが可能です。
一方、国内の供給能力が乏しく自国通貨建てで通貨を発行(国債を発行)できない国については、当然のことながら外国から外貨建て通貨により借金をしなければならないため、その返済に苦しむのは必至です。
ユーロ加盟国も同様です。
とりわけ、国内供給能力の乏しいギリシャなどは、常に外国からモノやサービスを輸入しなければならず経常収支が赤字化するため、ユーロ(共通通貨)不足が常態化して政府債務の返済が滞ってしまうこともしばしばです。
ギリシャ政府には、ユーロという共通通貨を発行する権限がないのですから仕方ありません。
結局、ユーロ圏では、国内供給能力に優れたドイツが一人勝ちしています。
要するに、自国の企業、自国の人材によりモノやサービスを生産できる「力」、それこそがまさに「国力」であることがわかります。
であるからこそ、国内供給能力を毀損するデフレ経済の長期化は、国家にとって死に至る病なのでございます。
ゆえに、現在のようなデフレ(+コストプッシュインフレ)期には、政府が需要を創出することで、すなわち財政支出を拡大することで企業や従業員たちのモノやサービスをつくる力を維持しつつ、新たな投資チャンスを創出しなければなりません。
つまり、財政支出の拡大による需要創造こそが雇用政策になるわけです。
ところが、総裁選挙の有力候補とされる小泉進次郎氏は、次のように言います。
「需要が無いなら企業は速やかに事業転換を図って人員を整理をするべきで、その代わり首を切る際には社員のリスキリングと再就職支援を義務化すればいい…」
実に軽薄で短絡的な発想です。
いいですか進次郎君、企業で働いた経験のないあなたには理解できないのかもしれませんが、そもそも再就職先を見つけること自体が大変なんですよ。
義務化と言うけれど、支援の定義にもよりますが企業の義務負担を大きくすれば返って正規雇用を減らすことになりますし、緩くすれば形ばかりの支援にとどまり結局は簡単に首を切られてしまうことになるでしょう。
それに人間は、誰もがそんなに器用なわけではありません。
基本的にスキルというのは蓄積ですので、職を転々とすることを前提にしたらリスキリングなど絶対に不可能です。
短期間の講習を受けたぐらいで、昨日まで営業職をしていた人が急に大工さんになれるわけなどなかろうに。
誰もが親の七光で簡単に国会議員になれるわけではないのでございます。
それにつけても、世間知らずもほどほどにして欲しい。
リスキリングが必要なのは、進次郎君、あなたです。