自民党総裁選挙で小泉進次郎氏と河野太郎氏が「雇用規制の緩和」を訴えています。
小泉氏の方は「緩和じゃなくて見直しです…」と、ここにきてトーンダウンをしていますが、だったら堂々と「雇用規制を強化する」と言えよ。
OECDは、各国の雇用保護の度合いについて、以下のような一定基準を設けて指標を示しています。
①手続きの要件:解雇通知の手続き、解雇通知までに要する時間
②予告期間・解雇手当:解雇予告期間の長さ、解雇手当金の額
③不当解雇規制の枠組み:不当解雇の定義、試用期間の長さ、不当解雇の賠償額、不当解雇の際の現職復帰の可能性
④不当解雇規制の実施:出訴できる期間、申立ての際の証明義務、外部機関による解雇の事前検証、解雇前の失業手当承認方法
上のグラフのとおり、我が国の雇用規制は既にOECD平均よりも緩い。
この上、さらに緩和する必要などあるのでしょうか。
因みに、高市早苗氏は解雇規制緩和に反対の姿勢を明確にしています。
それにつけても小泉氏の言い訳が笑えます。
「緩和ではなく自由化でもない。昭和の時代の働くルールを令和の時代に合わせる…」
そもそも、昭和の時代のルールをぶっ壊したのは、あなたのお父様ですよ。
まずは親父の不始末を詫びてからモノを言ってくれ。
昭和時代(高度経済成長期)の日本企業の基本原理は、「内部留保・再投資・終身雇用」にありました。
内部留保を蓄えた企業は、人材投資、設備投資、技術開発投資を怠ることなく成長基盤を磐石にし、社員は安定した雇用環境の中でスキルを磨きつつ、次世代にそれを継承していったのです。
昭和の雇用規制は単に労働者を守るというより、技術やスキルは人材をベースに継承されることを前提にしていたものであったのでしょう。
それが1990年代に入ると、「終身雇用は悪」とされました。
この時期の日本では、与野党ともに多くの政治家たちが、そして日本社会全体が、グローバリズム思想(=ネオリベラリズム思想)に飲み込まれていきました。
とりわけ、2001年4月に成立した小泉内閣は、「企業は株主のもの」という新自由主義路線を強烈に突き進み、いわゆる「構造改革」を断行したのはご存知のとおりです。
それに伴い、企業の雇用姿勢も大きく変貌していきました。
例えば2001年には、企業は年金について、企業が責任を負う「確定給付型年金」から、従業員の自己責任で年金を運用する「確定拠出型年金」への移行を進めました。
これによって企業は、従業員の年金に関する責任から逃れ、リストラによる人件費の削減をいっそう容易にしたのです。
また、小泉内閣は2003年に商法を改正し、取締役会の決定で自社株買いが機動的にできるようにする規制緩和を行なっています。
この改正商法で社外取締役制度も導入され、外資による日本企業の買収が容易にされました。
さらに2005年には会社法が制定され、株式交換が外資に解禁されています。
加えて、製造業への労働者派遣を解禁したのも小泉内閣です。
これら小泉内閣が行なった構造改革なるものは、ことごとく株主利益を最大化するためのものでした。
その代償として、大幅に人件費が抑制されたのです。
特に雇用規制の緩和は、企業が直ぐに首を切ることのできる「非正規雇用」を拡大させることとなり、現在も深刻化する少子化の一因になっています。
企業は株主だけのものではなく、社会の公器です。
それを前提にした雇用規制を、急ぎ再構築しなければなりません。
むろん、小泉氏には期待できない。
なにぶん、蛙の子は蛙でしょうから。