我が国の政府債務残高は昨年度の1年間で約102兆円増え、今年3月末時点での残高は1,217兆円となりました。
上野千鶴子は「今の政権、こんなに借金作ってどうすんの?」と言うけれど、この御仁、東京大学の名誉教授のくせして政府債務残高が「政府による通貨発行残高」に過ぎないことを知らない。
例えば日本政府の負債残高は、明治4年以降すでに3,973万倍(2019年度末時点)にも膨らんでいますが、これまで日本政府は一度たりともデフォルト(債務不履行)などしていない。
そのことを上野千鶴子はどう説明するのか?
できるはずもない。
なぜなら、おカネ(貨幣)とは何なのか、という経済と財政を正しく理解する上で必須な根本的な哲学的基礎についてまじめに考えたことなどないであろうからです。
だとすれば、社会科学を専門分野とする教授としても実に恥ずかしいことだと思います。
少なくとも、解らないなら黙っていればいいのに…
さて、私は上野千鶴子とは違って「今の政権、こんな程度の借金でどうすんの?」と言いたい。
度重なる消費税率の引き上げとコロナ自粛経済のWパンチで、既に多数の自殺者が出ているほどに国民経済は疲弊しています。
そしてこの深刻な経済下にあって事業継続を断念した事業主や商店主も多い。
即ち、コロナ対策としても不十分であるうえに、日本国内の供給能力が毀損され続けているため例えコロナ危機が終息したとしても供給能力の弱さから経済をより強く成長させる力が生まれない可能性が大なのです。
米国ではバイデン政権がコロナ対策だけでも約1.9兆ドルもの支出をし、コロナ後を見据えてなんと約4.3兆ドル(雇用計画で2.3兆ドル、インフラ計画等で2兆ドル)もの投資計画を発表しています。
ジャネット・イエレン財務長官は上院の公聴会で「大規模な財政出動による成長戦略は財政の持続可能性を改善する」と実に真っ当な主張をされています。
我が国の財務大臣とはえらい違いで、羨ましい。
この非常事態に、未だ我が国政府は「プライマリーバランス(基礎的財政収支)の黒字化」などと言っている体たらくです。
国民経済の鉄則として、誰かの負債は必ず誰かの資産です。
ゆえに政府の負債(赤字)は、必ず民間部門(企業・家計)の資産(黒字)になります。
今こそ米国を見習って財政支出(政府の負債)を拡大すべきときです。
ただ、イエレン財務長官の主張をよく聞くと、「政府支出を拡大させることが可能」としている根拠に多少の誤解があります。
それは「米国の金利は歴史的な低さだから、今こそカネを借りて投資(財政支出を拡大)すべきだた」としている点です。
米国や日本国のような主権通貨国においては、政府が国債を発行するにあたり「金利」の動向などまったく関係がありません。
金利水準によって借りるかどうかを決めるのは企業や家計などの民間部門だけです。
それに、政府の国債発行による資金調達は企業や家計の貯蓄を原資にしているわけではありません。
政府による国債発行を制約するのは唯一つ「インフレ率」だけです。
ゆえにイエレン財務長官は「歴史的なインフレ率の低さから、今こそ国債を増発し財政支出を拡大すべきだ」と言うべきところだったと思います。
とはいえ、ここまでくると例え根拠とした理由が間違っていたとしても「財政支出を拡大する」という結果さえ正しければそれでいい。
誠に恥ずべきことながら我が日本政府などは「財政支出を拡大できない」としている根拠も結論も両方まちがっています。
上のグラフのとおり、「歴史的な低さだ」と言う米国の長期金利よりも日本の長期金利はさらに低い。
ここはぜひとも米国にならって大規模な投資計画をつくってほしい。