総裁選に出馬中の小泉進次郎氏が、雇用問題について次のように言及しています。
「労働市場の流動性を高めるという方向性は、おそらく誰にも異論がない…」
よくもまあ、こんなことがぬけぬけと言えますね。
労働市場の流動性を高める方向性については、異論だらけです。
というか、雇用の流動性を高めてきたことが、現在の経済停滞と少子化の一因でしょうに。
小泉氏をはじめ、彼らネオリベラリストの言う「雇用の流動化」とは、要するに企業の固定費(人件費)をカットするために正規雇用を減らし非正規雇用を増やすための方便にすぎません。
正規雇用の人件費は企業にとって「固定費」となりますが、これを雇用契約を容易く打ち切れる派遣社員に変えることで、人件費は固定費ではなく「変動費」となります。
すなわち、企業は人材を資材と同じ扱いにできるわけで、誠に酷い話です。
資材扱いされた非正規雇用者は、当然のことながら低賃金で働かされますので消費支出を拡大することができず、結婚さえ大きな経済的ハードルとなります。
現に正規雇用者の婚姻率が約60%であるのに対し、非正規雇用のそれは約20%にまで落ち込んでいます。
なにしろ労働とは、「所得創出」の源泉であり国民の生業の基です。
労働の機会を奪われれば、国民は所得を得る機会を喪失し、やがては飢え死にします。
生活の基盤である労働に、政府がある程度の規制をかけるのは当然すぎるほど当然な話です。
もしも最低賃金制度が撤廃され、労働者の解雇までが撤廃された日には、日本社会の安定が揺らいでしまうこともまた当然です。
にもかかわらず、これまで自民党政権は労働者を守るための「労働規制」を「岩盤規制」などと呼称してぶち壊してきました。
結果、小泉氏の望みどおりに労働市場は流動化し、労働者同士の競争が激化しました。
しかもその競争は日本人労働者同士ばかりではなく、外国人労働者とも賃金切り下げ競争を激しく繰り広げるかたちとなりました。
とりわけ、進次郎氏のお父さんが総理時代に行った、「製造業でも派遣社員を雇用できる」という雇用規制の緩和は大きな影響をもたらしました。
それにより、我が国の非正規雇用の数が初めて2000万人を突破したのです。
当時、小泉内閣下で構造改革を推し進めた竹中平蔵氏は「正規社員は既得権益であり、守られ過ぎている」と言っていましたが、小泉進次郎氏もまた同じ考え方なのでしょう。
企業で役所であれ、正規雇用で雇い続けることこそが「人材投資」であることを理解すべきです。