きのう(9/5)、厚生労働省から7月の実質賃金の速報値が発表されました。
実質賃金とは、働く人たちが実際に受け取った給与(名目賃金)から物価変動の影響を差し引いた賃金のことです。
例えば、名目賃金が10%上昇しても、世の中の物価が10%上昇していれば、実質的な賃金は増えていません。
ゆえに、国民生活を豊かにするためには、名目賃金の上昇率が物価の上昇率を上回る必要があります。
それが実質賃金の上昇です。
また、実質賃金はモノやサービスを「買う力」を表します。
しかしながら我が国では、1998年にデフレ経済に突入して以来、1997年をピークに実質賃金は下がり続け低迷を続けています。
実質賃金には賞与や手当などを含めた「現金給与総額」と、基本給や所定内給与である「きまって支給する給与」の2種があるのですが、上のグラフのとおり、きまって支給する給与は、なんと30ヶ月連続で前年同月比マイナスになりました。
実に深刻な事態です。
断っておきますが、例え就業者数が増えていても、実質賃金が下落している以上、国民経済の貧困化を意味します。
ちなみに、我が国の少子化問題も、四半世紀にわたる実質賃金の低下が大きく影響しています。
残念ながらデフレ突入以降の歴代内閣(小渕内閣を除く)は、実質賃金の下落が続いていることを軽視し続け、「インバウンドで〇〇万人」とか、「資産倍増」とか、「プライマリー・バランスの黒字化」とか、まったくお門違いな政策目標を掲げ実行し、国民を貧困化させてきたのです。
政治行政における「豊かさ」とは、おカネの量が増えることではありません。
おカネなど、日銀が発行すれば(紙幣を刷れば)、いくらでも増やせます。
しかしながら、どんなに手元におカネがあったとしても、生活するために必要なモノやサービスを購入(入手)できないのであれば、それは貧困と同義です。
おカネとは、モノやサービスと交換されて初めて実体的な価値を持つわけですから。
モノやサービスを買う力が増すことを、政治行政の世界では「豊かさ」と呼ぶ所以です。
よって国力の源泉とは、まず何よりも生産能力(モノやサービスをつくる力)であり、そしてそれらを国民がより多く手に入れるようにするためにこそ、実質賃金の上昇が必要なのです。
何度でも言います。
豊かさは「必要なモノやサービスを入手できるか否か」で決定します。
少なくとも、政府や自治体の財政黒字が増えることが豊かさではありません。
川崎市でも「もっと財政黒字を増やせ…」と叫んでいる人たちがいますが、この種の人たちは間違いなく「貨幣とは何か」「GDPとは何か」「実質賃金とは何か」「所得とは何か」「豊かさとは何か」を知らない。