日本経済新聞に、「岸田政権の経済政策、識者の見方」という記事がありました。
よく読むと、「岸田政権の経済政策について専門家に意見を聞く」として、例によって緊縮派の権化である慶応大学の土居丈朗先生が識者として選ばれていました。
『財政論議に及び腰、歳出抑制できず
慶応義塾大学の土居丈朗教授
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUA037OM0T00C24A9000000/
経済成長の芽生えとなる政策を進めたが、財政健全化の取り組みは期待外れだった。必要性の低い定額減税を打ち出し、少子化対策では消費税による財源確保の議論を避けた。財政論議には及び腰で、歳出を抑制できなかった。(後略)』
この記事を読んだだけで突っ込みどころ満載なのですが、「財政健全化の取り組みは期待外れだった…」は実に土居丈朗先生らしい。
それに、岸田内閣の経済政策に“成長の芽生え”になるような政策なんてありましたっけ?
そもそも、政権発足当初に唱えていた「小泉以来の新自由主義からの脱却」は何処へ行ってしまったのでしょうか。
例えば、小泉内閣が民営化した郵政3事業を見直し、再公営化するぐらいのことでもやってくれていれば、その本気度が少しは伝わってきたと思うのですが、残念ながら「新NISA」とか「金融資産の倍増」とか、結局は新自由主義的な方向へ行ってしまいました。
結果的には、資産倍増どころか、日銀に利上げなんてさせたものだから、日経平均株価が下落して新NISAに投資した人たちの金融資産を大幅に目減りさせてしまいました。
おそらくは、このことが岸田さんに退陣を決断させた決定的な理由だったのではないでしょうか。
退陣を決めさせたもう一つの理由は、もみ手をして擦り寄った米国のバイデン大統領が退陣を決めたことだったと思われます。
残念ながら岸田さんは、再選する可能性の高いトランプ氏から相当に嫌われているようですから、日本国民からの支持がない上に、頼りの米国様からも見切られてしまってはどうしようもありません。
話を土居丈朗先生に戻しますが、土居丈朗先生によれば「定額減税」は国民にとって必要性の低い政策なのだそうです。
定額給付ではなく定額減税にしたことは確かに問題でしたが、コストプッシュ型インフレによって実質賃金が益々下落しているなか、減税によって国民の可処分所得を増やすことは必要性の高い政策だと思うのですが、土居丈朗先生にとってはそうではないらしい。
極めつけは、岸田内閣が消費税(増税)による財源確保の議論を避けたことが気に食わない、と土居丈朗先生は言っています。
どうしても消費税の税率を引き上げたいらしい。
とはいえ、これまで行ってきた消費税増税(税率の引き上げ)が、どれだけデフレ脱却の芽をつんできたと思っているのか。
というより、財源を増税に求めていること自体が経済学者として終わっています。
よく考えてみよ。
おカネ(日銀券)を刷ることができる日本政府(日銀は政府の子会社)が、どうしてわざわざ国民の懐にある日銀券を回収し、それを財源としなければならないのか。
何度でも言いますが、徴税の目的に財源確保はありません。
主流派と言われる経済学者たちには、どうしてもこのことが理解できないらしい。
岸田内閣は期待外れだったかもしれませんが、土居丈朗先生には期待すらしていません。