世界最高峰の気象予測精度をもつECMWF(欧州中期予報センター)によれば、台風10号サンサンは能登半島方面に北上し、本日午前9時ごろには中心点が富山市に達しようとしています。
ただ、昨日の午後9時には風速が22ノット(約11キロ/秒)にまで勢力は弱まっています。
たしか台風の定義は風速17キロ/秒以上だったと思いますので、各気象予測機関も当該台風を「熱帯低気圧」と呼称していますね。
JTWC(米国の海空軍が共同で真珠湾海軍基地に設置している台風警報センター)のサイトでも、台風10号サンサンは「Tropical Depression(熱帯低気圧)」と表記されています。
しかし熱帯低気圧に変わったとはいえ、今後とも前線と一体化して北日本を通過する見込みで、その影響により近畿、東海、関東甲信地域では大雨への警戒が必要とのことです。
とりわけ、これまでに降った雨によって地盤が緩んでいる地域では、わずかな雨量でも土砂災害が発生しやすくなりますので予断は許されません。
さて、この台風情報について、ネット上では面白い情報が飛び交っています。
台風10号の進路が実に不自然な動きをしているため、「この台風は人工台風では…」という憶測情報です。
確かに、沖縄方面から九州地方にゆっくりと北上してきた台風10号は、北九州あたりで直角に東へ転換、近畿地方に入ると今度は瞬間的に南下し、また直ぐに反転して北上しはじめました。
「この動きは極めて不自然だから、人工台風にちがいない…」という、いわば陰謀論ですね。
敢えて“陰謀論”と言わせて頂きますが、確かに人工的に雨を降らせる技術が既に存在していることは承知していますが、さすがに人工的に台風をつくりだす技術が開発されているとは思えません。
ただ、爆弾を使用して台風の勢力を弱まらせる実験が行われた話については仄聞したことがあります。
たとえ弱らせることはできても、台風のような巨大な暴風を無から人工的に発生させるのは、さすがに現代の科学技術をもってしても難しいのではないでしょうか。
現にネット上のいかなる陰謀論をみても、人工台風の発生を可能にする具体的技術についての言及はありません。
ただ不自然な動きだから…という理由だけです。
なにせ、台風は地球の自転の影響を受けて発生しているわけですから、人工台風を発生させるには地球の自転さえも人工的にコントロールできるほどの技術が必要なのではないでしょうか。
台風10号が遅い速度で複雑な動きをしているのは、台風がジェット気流に乗り切れず、南東太平洋に張り出している太平洋高気圧の壁に阻まれているためかと思われます。
気象予報士もそのように説明しています。
政治の世界においても、とかく陰謀論が盛んですが、陰謀論に陥ってしまうと、どうしても冷静かつ緻密な分析が疎かにされ、いわば思考停止に陥って正しい結論を導き出せないことがしばしばです。
海王星は、天王星の軌道が計算に合わないことから発見されました。
すなわち、天王星の軌道が計算に合わなかった原因は、海王星の存在にあったのであって、何かの陰謀が原因ではありませんでした。
理論どおりにならないことにもそれなりの理由があるわけで、大切なことは直接的な分析対象(天王星)だけを見ず、海王星を探すことです。