新たな総理総裁に求めるもの

新たな総理総裁に求めるもの

岸田総理の事実上の辞任表明を受け、自民党総裁選に注目が注がれています。

新しい自民党総裁が新しい内閣総理大臣になる以上、それも当然です。

その自民党総裁選に関し、今朝の日本経済新聞が上のグラフを示しながら次の記事を掲載しています。

『総裁の覚悟、高齢者負担が問う 医療費「仕送り」15年で2倍
 自民総裁選2024 リーダーの試練
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUA197ER0Z10C24A8000000/
9月に新たに選ばれる自民党総裁は、次期首相として日本の難題に真正面から取り組む覚悟を問われる。最優先の政策課題は歴代の政権が逃げ続けてきた医療改革だ。高齢者にも応分の負担を求め、医療機関に対価として払う診療報酬のあり方を含め大胆に見直さなければ、将来世代への責務を果たせない。(後略)』

加えて、日本経済新聞は「リーダーに問う覚悟」として次の3つを挙げています。

・高齢者に応分の負担を求めることができるか
・薬価引き下げ頼みの診療報酬を変えられるか
・過剰診療を防ぐために追加負担を求められるか

要するに、日本経済新聞は「国民医療費が増大する以上、新たな総理総裁は国民に対して負担増を求められる人でなければならない」と言っています。

相変わらず、この新聞社は「財源は国民負担(税や保険料)しかない」と思い込んでいます。

仮に医療需要が拡大しても、医療サービスという供給能力が追いつくことができれば、それは立派な経済成長の原資であることさえ、この新聞社は理解していません。

医療費もGDPになることを知らないのでしょうか。

何度でも言いますが、医療であれ、福祉であれ、公共事業であれ、おカネは使っても消えません。

必ず誰かの所得(付加価値=GDP)になります。

そして財源が足りないのであれば、迷わず国債を発行すればいい。

道路やダムをつくるのに、わざわざ税金をかき集める必要などないのと同じです。

いま私たち日本国民が普段使っている道路が「すべて税金をかき集めて作られたもの…」と思い込んでいる人は、すこし頭を冷やしたほうがいい。

むろん、通貨発行権のない地方自治体は地方債(建設債)を税収で返済する会計処理を行っていますが、実際には毎年、建設債を発行していますので、永遠に借り換え続けているも同然です。

MMT(現代貨幣理論)が証明しているように、税収は財源ではありません。

通貨発行権のない地方自治体であっても、中央政府と同じように「歳出」が先であって「歳入(税収)」は後になります。

もしも我が国に医療問題があるとすれば、それは日本経済新聞が言うような財源不足の問題ではなく、人手(供給)不足の問題です。

この素晴らしい水準を誇る我が国の医療サービスは、主として「医師や看護師の献身」によって成立しています。

かつて米国のヒラリー・クリントン国務長官は、日本を訪れた際に「日本の医療は、医療関係者の聖職者のような努力によって維持されている」と発言しています。

人手不足を解消していくためには、医療サービスの生産性を向上させる投資が必要になります。

その財源は、むろん国民負担ではなく国債発行でいい。

そもそも、こんご日本経済がデフレを脱却して着実に成長していくことを前提とすれば、国民は医療費などの負担感をさほど重くは感じないはずです。

例えば、日本の医療費は対GDP比率で8.18%(2021年)ですが、かつてはOECD諸国の中では下から数えたほうが早いレベルでした。

日本だけがデフレで経済成長していないため、今は上から数えたほうが早い。

ただし、日本の場合、政府支出に占める公的医療費の割合はOECD加盟国の中で最も高く、医療費に占める公的支出の対GDP比率は7%以上ですので、国民が実際に支払っている医療費は2%以下ということになります。

それでいて高水準の医療サービスを受けられるわけですから、日本の医療システムは世界で最も割安であるとも言えます。

とはいえ残念ながら、1998年以降のデフレ経済で実質賃金は下がり続け、可処分所得も減り続けているがゆえに、国民負担が重くのしかかっている状況にあります。

財務省、及びその御用新聞社が主張するような「国民負担増による財源確保策」を前提としていたら、医療に関わらずあらゆる供給能力が毀損され、通貨発行能力を喪失し、やがて私たちの生活は発展途上国並みの貧困に陥ることになります。

よって、新たな総理総裁は、正しい貨幣観、正しい財政論をもった人でなければならない。

もっと言えば、新たな総理総裁は「財務省や日本経済新聞社と闘ってくれる人」でなければならない。