7月の消費者物価指数は、生鮮食品を除く総合指数(コアCPI)が前年同月比で2.7%上昇しました。
生鮮食品を除く総合指数ですから、エネルギー関連が含まれます。
そのエネルギー関連の価格上昇が主因となってコアCPIを強く押し上げた格好です。
すなわち、典型的なコストプッシュ型インフレです。
主流派経済学は「この世にコストプッシュ型インフレなど存在せず、インフレはデマンド型インフレのみ」という教義で、財務省もこれに従う。
結果、彼らに言わせると「財政支出を抑制しないから、インフレ率が上昇するんだ…」となります。
といっても、インフレ率が上昇しなくても彼らは常に財政収支の均衡を主張してます…
さて、財務省は平然と国民に嘘をつきますが、その嘘の一つに「戦後のインフレは戦時中の国債発行により発生した」というものがあります。
確かに戦後(昭和21年)の日本では、一時的に500〜600%もインフレ率が上昇しました。
物価が6倍から7倍に上昇したわけです。
因みに、これをハイパーインフレなどと呼ぶ人もいますが、ハイパーインフレの定義は「一年間で130倍以上の物価上昇」です。
1杯1,000円のラーメンが一年後には13万円、これがハイパーインフレです。
財務省は「戦後、500〜600%もインフレ率が上昇したのは、戦時中に大量の国債を発行したからだ…」と喧伝しています。
国債発行=インフレ上昇、というイメージを定着させ、例によって緊縮財政(国債発行の抑制)を正当化しようとしているわけです。
とはいえ陳腐蒙昧な嘘だから、その理屈には綻びだらけです。
例えば、国債増発がインフレの主因であるならば、戦後よりも国債発行量の多かった戦前戦中はどうしてそれほどにインフレ率は上昇しなかったのか?
あるいは、日本政府の国債発行残高は既にGDP比200%を超えていますが、コストプッシュでインフレ率が上昇するまで、1998年以降、一貫して日本経済はデフレでインフレ率は停滞してきました。
これらをどう説明するのか?
また、アベノミクス以降、日銀は大量の市中国債を買い取る量的金融緩和を行ってきてましたが、金融機関の日銀当座預金が増えるばかりで、インフレ率はまったく上昇しませんでした。
財務省は、このことすらも説明できない。
戦後、インフレ率が一時的に上昇したのは、戦争によって国内の供給能力(生産資産)が破壊され尽くしたからです。
要するに「供給制約」というコストプッシュによって物価が上昇したのであって、国債の発行とは無関係です。
その後、供給能力の回復とともに、インフレ率は落ち着いていきました。
1998年以来のデフレで国内の供給能力が毀損され続けてきたところに、資源エネルギー価格の高騰や為替安という外的要因が重なってコストプッシュ・インフレに見舞われたことを思えば、いわば戦後と同じです。
ただ、戦争中に「国内の供給能力」を破壊したのは米軍ですが、1998年以降にそれを破壊してきたのは財務省による緊縮財政です。
現在のコストプッシュ・インフレを克服するためには、まずは企業や家計の経済的負担を軽減させ、国内の供給能力を引き上げねばなりません。
そのためには何よりも、政府による国債発行(財政支出)拡大が求められます。