財政規律の壁

財政規律の壁

おコメの値段が上がっています。

消費者物価指数(7月)をみますと、米穀の物価上昇率は前年同月比17.2%で20年ぶりの高さとなっています。

現在の米価高騰は、政府の農業政策の失敗にあると言っていい。

世間では「日本の農家は保護しすぎているぅ〜」と言われてきましたが、事実は全くの逆で、先進国のなかで日本の農家ほど政府に保護されていない国はありません。

とりわけ、長年にわたる減反政策によって国内自給能力を低下させてきたほか、農家に対してまともな所得保障も価格維持政策も行ってこなかったのですから政府の罪は重い。

ちなみに、我が国の「耕作放棄地」は既に42.3万ヘクタールにも及んでいます。

いったん耕作放棄地にしてしまうと、すぐに耕作地に戻すことができません。

戻るのに数年を要します。

だからこそ、政府は耕作放棄地を増やすぬように、農業に対する何らかの保護政策を採らなければならないのでございます。

さて、おコメ1俵の生産コストは約12,000円ぐらいです。

市場での実際の買い取り額は、これまで約9,000円でした。

つまり、おコメ1俵あたり3,000円の赤字がでていたわけです。

これでは稲作農家の経営が成り立つわけがない。

政府が農家に対し、1俵あたりの赤字分3,000円、プラス2,000円の利益を補償するためには、1俵あたり5,000円の補助金が必要になりますが、仮に主食全700万トン分を補助しても、たかだか3,500億円程度の予算に過ぎません。

敢えて言いますが、たったの3,500億円です。

この程度の予算すら付けることができないのが、今の日本政府なのです。

あるいは、全国の小中学校の学校給食を無償化した場合の費用は約5,000億円になりますが、これを通貨発行権のある政府負担とし、給食での主食のパンを止め、毎日おコメにしたとすれば、それだけでも我が国のおコメの自給力(自給率)は相当に上がります。

おそらく食料自給率は50%ちかくに高まるのではないでしょうか。

前述の農家への所得補償を合わせても1兆円にも満たない額です。

ご存知の通り、農水省の予算は財務省の枠によって常に上限が2兆円に抑えられています。

ゆえに、もしも農水省が概算要求で農家への補助金(3,500億円)を計上すると、財務省から隙かさず次のように言われます。

「3,500億円の予算でコメ農家を救いたいのなら、農林水産省さんは他のどこの予算を削ってくれるんですか?」と。

この「財政規律の壁」を突き破るのは、なかなかに難しい。