何日か前に当該ブログでも取り上げましたが、森林資源の破壊は帯水層への地下水の滞留蓄積を妨げます。
「恵みの雨」が森林資源を支えているというのは大きな誤解で、実は森林資源こそが「恵みの雨」を降らしているという事実が近年の科学的調査において証明されています。
森林の樹木は地中の水分を重力にさからうように各枝各葉にまで吸い上げ、その吸い上げた水分を水蒸気として空気中に放出し、その水蒸気が雨粒となって森に降り注いでいます。
このように雨が森をつくるのではなく、森が雨を降らしているわけです。
信じがたいことかもしれませんが、これが真実です。
樹木が降らす雨はまた、今度は樹木やその土壌を濾過材にして地下の帯水層に滞留蓄積されていきます。
その帯水層の水が、いわゆる地下水です。
例えば米国では、この帯水層の地下水を大量に使って畜産や農業が営まれています。
一方、世界ではものすごい勢いで森林が破壊され、帯水層の水が地球規模で急速に減っています。
要するに地下水に対して需要が供給を大幅に上回っており、やがて近い将来、地球上から水が消失する「DAY ZERO」の日が来るとまで言われいます。
1990年時点で、世界には41.28億ヘクタールの森林面積がありましたが、2015年には39.99億ヘクタールまで森林面積が減少しています。
この25年間で1.29億ヘクタールもの森林が減少したことになります。
1.29億ヘクタールといえば、南アフリカの国土面積と同じくらいの規模です。
森林破壊が主として進んでいるのは、南米とアフリカです。
世界では毎年730万ヘクタールの森林が地球から失われています。
わかりやすく言うと、東京都の面積に匹敵する森林が毎週、失われ続けていることになります。
これは水だけの問題ではありません。
現在、地球の森林面積は地上の約3割を占めていますが、そこには野生生物の半分以上が生息しています。
なので森林の消失は多くの野生生物を絶滅の危機に追いやることにも繋がります。
つまり森林が無くなり野生生物が絶滅すると、森以外の環境に住む他の野生生物とも共生や食物連鎖でつながっているために、さらに多くの生物の命の危機に関わるわけです。
なお現在、住まいや食料を直接、森などの地域に頼って暮らしている人々が世界中で約2億5000万人おり、森林破壊はこのような人々の生活をも奪ってしまうのは言うまでもありません。
2007年から2016年にかけて、人々の活動によって放出された二酸化炭素量のうち約29%にあたる量を主に森林が吸収してきたという報告がありますが、火災や伐採によって樹木の中に蓄えられていた二酸化炭素が大気中に放出されることで、異常気象の原因とされる気候変動(地球温暖化)の要因となったり、あるいはゲリラ豪雨などの水害や大規模な森林火災の長期化をもたらしたりなどの被害も増えていきます。
そんな世界の現状とは裏腹に、我が国は過去40年間にわたり森林面積の増減はほぼ無く、日本の国土の約7割を森林が占め、その面積は約2500万ヘクタールとなっています。
上のグラフのとおり、日本の森林率は68%を占め、フィンランド、スウェーデンに次ぐ世界第3位の「森林大国」と言われています。
因みに、木材やキノコなどの林産物からあがる日本の森林資源による経済的価値は、年間で6700億円になるという試算もあります。
この数字は、実際に市場で取引されている量から算出されています。
即ち現状では、日本の森林資源は余っている状態なので、実際はもっと経済価値が高いとも言えます。
日本の森林状況をみると、戦後までは木を伐採し過ぎて禿山が多くありましたが、1996年まで続いた国の拡大木造政策によって結構な勢いで植林が進みました。
ただ、木は50年で伐採の適齢期を迎えるとされています。
現在の日本の木は50歳になるものが多く、まさに伐採適齢期の木が多くあります。
日本の森林面積自体は一定ですが、木の幹が太くなっており、結果的に利用可能な木材が大量に増えています。
木の幹が太くなっているだけなら大した問題でもないように感じますが、増加量は年間で1億㎥になります。
1億㎥というとイメージが湧きませんが、東京ドーム81個分が満杯になる量ですので相当な量です。
そして、ここが大自然の恐ろしいところですが、日本には森林がたくさんあって嬉しいことながら、このまま使用しないとどんどん木が増えてしまい、やがて鬱蒼とした暗い森となって森林は荒廃し死滅してしまうのです。
莫大な森林資源を失えば、いかなる事態がもたらされるかは今さら申し上げるまでもありません。
森林資源は多様な機能によって環境や私たちの生活を守ってくれているわけですから。
古代より私たち日本国民は、国土に働きかけなければ国土の恵みを受けることのできない宿命の中にあります。
そのことは、今なお変わっていません。
そこで林家の保有山林面積を調べてみますと、我が国では林家数83万戸のうち87%が所有面積10ヘクタール未満の山林を所有されています。(出典:内閣府)
なお内閣府によれば、この全体の約8割の森林所有者は「森林の経営意欲に乏しい」という調査結果がでています。
その理由の第一は事業地確保が困難(37.9%)、第二は路網の未整備(25.5%)、第三は林業機械の資本整備更新が困難(25%)とのことです。
結果、森林所有者と林業経営者とのあいで大きなミスマッチが生じているのが我が国の実状です。
そのミスマッチを埋めるのが、国であれ、地方であれ行政の大きな役割だと考えます。
これまで「行政は市場に介入してはならない」というのが主流派経済学や新自由主義の理論原則でしたが、そのことが大きな間違いであったことは既に現実の世の中が証明しています。
何度でも言います。
我が国は、国土に働きかけなければ国土からの恵みを享受することができない国なのです。