政治の世界では、なかなか国民に理解してもらえぬことが多い。
実に歯がゆいことですが、例えば財政問題について「財政赤字こそが正常な状態なんです」と言ったところで、ほとんどの人に怪訝な顔をされるだけです。
家計簿ではあたり前のことが、政府や地方行政の財政ではあたり前ではないことが多々あります。
むろん、家計の赤字は悪なのですが、政府(地方行政を含む)の赤字は家計の黒字になります。
「そんなバカな…」と思われるかもしれませんが、歴然たる事実です。
政府が財政赤字になれば、国民が黒字になるんです。
2020年にコロナ対策として国民一人あたり10万円の特別定額給付金が給付されましたが、あの財源は国債(政府の赤字)でした。
国債という政府の赤字が、国民一人あたり10万円という黒字をつくったわけです。
このように言うと今度は「そうは言っても、国債の発行は将来世代へのツケじゃないか…」という反発がくる。
しかしながら、安心してください。
自国通貨建てで発行された国債を返済している国なんて一つもなく、我が日本政府においてもしかりなのです。
政府の予算書をみますと、たしかに「国債償還費」が計上されており一見は返済しているようにみえるのですが、実際には借り換えの連続であり、国民から集めた税金で返済しているわけではありません。
「では、いつまで借り換え続けることができるのか?」と疑問が湧いてくるかもしれませんが、むろん日本政府が存続するかぎりです。
これも理解され難いことですが、政府は国債の発行を通じて国民が使用する貨幣(通貨)を供給しています。
皆さんのお財布やお手元にある現金紙幣の元をたどっていくと、必ず国債に行き当たります。
そもそも現金紙幣そのものが政府の負債ですので「政府の赤字がけしからぬ…」と思うのであれば、お手元の現金紙幣を燃やして灰にしてみてはどうか(むろん、それは法律で禁止されてます)、その分、政府の赤字が減りますので。
実は政府支出(政府の赤字拡大)と経済成長率には相関関係があります。
逆に言えば、財政健全化を理由に政府の赤字を縮小させようとする国は、経済成長を抑制することになります。
それを表したのが冒頭のグラフです。
経済が成長しない国では、国民が豊かな生活を送ることはできません。
ゆえに、政府に健全財政を求める行為は、国民自身が自分の首を締める行為なのでございます。