東京株式市場では、週明けの8月5日まで3営業日連続で値下がりし日経平均株価は7,600円あまり下落、過去最大の下げ幅を記録しました。
と思っていたら、翌日の6日には今度は過去最大の上げ幅で上昇し終値で3,200円ほど値上がったとのことです。
この値動きだけをみても、株価の変動が実体経済(国民経済)の景気動向に連動などしていないことがわかります。
ただただ、市場参加者たちの思惑や期待によって株価が売り買いされているだけです。
さて、過去最大の下げ幅で急落した原因は、むろん7月31日に日銀が政策金利を0.25%に引き上げることを発表したからに他なりませんが、不思議にも特に日本経済新聞社がそうであるように、多くのメディアは過去最大の下げ幅となった下落要因が日銀による「利上げ」にあったことを解説しようとしません。
彼らは「米国の景気が悪化するという懸念から株価が暴落した」と言っています。
仮に懸念があったとして、その程度のことで過去最大の下げ幅で下落するわけなどなかろうに。
これまでにも米国景気の先行きが懸念されたことは何度もありましたが、そのたびに過去最大の下げ幅で日経平均株価が下落してきたわけでもありません。
どうみても7月31日の「日銀の利上げ決定」が要因だろうに。
なぜ、メディアはそれを言えないのでしょうか?
その理由はおそらく、これまでメディアは「日米の金利差によって為替安となり、これが景気を抑圧している…」というレトリックで報道してきたからだと思います。
要するに、多くのメディアは「日銀は一刻も早く利上げすべきだ…」みたいに報道してきたわけです。
ところが、日銀の利上げにより日米の金利差が縮小したにもかかわらず、株価は下落しました。
すると今度は、利上げしたことについてはだんまりを決め込む。
これが日本のメディアです。
今回の株価暴落について私は次のように理解しています。
まず、日銀の「利上げ決定」とともに、実は米国でも9月以降に利下げされていくことが予測されています。
それにより「日米の金利差は更に縮小し、今後は円高ドル安の方向に向かっていくに違いない…」という思惑と期待が市場関係者たちに生まれ、ドル売り円買いが進み為替が円高に振れた。
いわゆる「自己実現的予言」というやつですね。
1ドル162円まで近づいていた円相場が、一気に145円台にまで高くなりました。
そして我が国においては、円高になると日経平均株価は下落します。
なぜなら、いつも言うように我が国の株式市場では、株式保有率約3割の外国人投資家たちが市場取引の約7割を占めているからです。
円安だと彼ら(外国人投資家)にとって日本株は割安となり「買い」、円高だと彼らにとって日本株は割高となり「売り」となります。
上のグラフをご覧ください。
それを証明するように日経平均株価とドル円相場の動きは見事に相関しています。(相関係数:0.75)
これらのことが日経平均株価を過去最大の下げ幅で下落させた最大の要因かと推察します。
むろん、株価の乱高下も問題ですが、もっと深刻なのは今回の「利上げ」が国民経済に与える影響です。
今回の利上げによって短期プライムレート(最優遇貸出金利)が引き上げられますので、日本企業はおカネを借りにくくなりますし、家計も住宅ローン金利の上昇により圧迫されることになります。
利上げとは、即ちデフレ化政策そのものです。
いま日本経済はデフレとコストプッシュ・インフレに見舞われています。
加えて、実質賃金が26ヶ月連続で下落中。
こうしたなかでの「利上げ」は日本経済のデフレ脱却をさらに遠のかせるため、大きな判断ミスであったと言わざるを得ません。