大本営発表並みの景気判断

大本営発表並みの景気判断

7月25日、内閣府から7月の『月例経済報告』が発表されました。

月例経済報告とは、景気に関する政府の公式見解をまとめた報告書のことです。

経済指標をもとに内閣府がとりまとめ、経済財政担当大臣が関係閣僚会議に提出し了承を経て月次で公表しています。

要するに、毎月発表される「時の景気」に関する政府見解です。

といっても政府の景気判断は概ねテンプレ・フレーズで、毎度おなじみとなっています。

何があっても「景気は、このところ足踏みもみられるが、緩やかに回復している」と。

ほとんど大戦末期の大本営発表と同じで、現実の景気状況を国民に知らせる気など更々ない。

例えば、国内需要(民間需要)の実質値をみますと、2023年のQ2(4〜6月期)から2024年のQ1(1〜3月期)まで、4四半期連続でマイナスとなっていますが、それでも緩やかな回復なのでしょうか。

金融機関の企業への貸出態度をみても、未だコロナ以前の水準には至っておりません。

それに、実質賃金はもっか26ヶ月連続でマイナスです。

巷には「名目値ではGDPは増えているじゃないか…」という人がいますが、そういうお〇〇さんは黙っていましょう。

外的要因によるコストプッシュ・インフレが続いていますので、名目値で増えるのはあたり前です。

GDPは、投資と消費と純輸出の合計です。

GDP = 投資(政府・民間) + 消費(政府・民間) + 純輸出

月例経済報告の資料によると、直近データである2024年Q1(1〜3月期)の輸出は5.1%も落ち込み、個人消費はプラスになるも僅か0.7%の伸びです。

需要の約6割を占める個人消費ですが、実質賃金が26ヶ月連続で下落していては大きな伸びは期待できない。

投資部門では、とりわけ民間住宅の落ち込み(2.9%減)が大きい。

加えて、PB黒字化目標を掲げる政府はカネを使わないので、公的需要もマイナスです。

これではGDPが成長するわけがない。

ゆえに政府自ら「2024年度の成長率は1%を切ります…」と試算しています。

それでも月例経済報告では、「景気は緩やかに回復している…」のだそうです。

孔子が言っているように、政治は国民の信頼なくして成り立つものではありません。

むろん、国民が信頼するためには、政治(政府)が信じ頼れる存在であることが大前提です。

孔子は、政治を行う上で最も重要なのは、①軍事上の安全、②食糧上の安全、③民衆の信頼の3つを確保することだ、と言っており、そのなかでも③民衆の信頼を最上位においています。

残念ながら今や我が国は、①②③の全てが危うい。