内閣府は例年1月と7月に、基礎的財政収支(プライマリー・バランス以下、PB)を試算し、例の『経済財政諮問会議』で公表しています。
念のために今一度書きますが…
PB目標とは、国債を発行することなく税収等のみで政策経費を全て賄わなければならないとする財政目標の一つです。
例えば、1円でも国債を発行して政策経費を賄った場合は、1円のPB赤字となります。
一方、『経済財政諮問会議』とは、政府(内閣)の経済財政政策に関する重要事項について、有識者(!?)等の識見や知識を活用し、内閣総理大臣のリーダーシップを発揮することを目的に内閣府に設置された合議制機関のことです。
そのメンバーは以下の11名です。
岸田文雄(総理)
林 芳正(官房長官)
新藤義孝(経済再生担当大臣)
松本剛明(総務大臣)
鈴木俊一(財務大臣)
齋藤 健(経産大臣)
植田和男(日銀総裁)
十倉雅和(住友化学株式会社 会長)
中空麻奈(BNPパリバ証券株式会社)
新浪剛史(サントリーホールディングス株式会社 社長)
柳川範之(東京大学大学院経済学研究科教授)
さて、来週の7月29日、その『経済財政諮問会議』が開催される予定なのですが、そこで最新のデータを使ったPB試算が例年どおりに発表されます。
驚くなかれっ、なんと国と地方を合わせたPBが2025年度にはじめて「黒字になる」という。
日本経済新聞によると、黒字になる理由は「企業の好業績や物価高を背景に税収が増え、収支が改善する」とのことです。
私のブログをお読み下さっている皆様はもうお解りかと存じますが、そもそもPBなるものは過熱した景気を抑制しなければならない局面に至らないかぎり、絶対に黒字化などしてはなりません。
ご存知のとおり、現在の景気は過熱などしておらず、デフレとコストプッシュインフレと消費税のトリプルパンチで国民経済は疲弊低迷しています。
しかも、もっか実質賃金は26カ月連続で下落中です。
よって、今はむしろPB赤字を拡大して(国債を発行して)、政府は財政支出を拡大しなければならない局面にあります。
新規国債の発行とは、新たな貨幣供給を意味します。
上のグラフのとおり、この約30年間で家計の金融資産は2倍に増え、今や2,000兆円を超えていますが、これは日本政府が政府債務(赤字)を拡大してきたがゆえに増えてきたものです。
逆に政府が政府債務を縮小(黒字)にすると、家計(民間部門)の金融資産は必ず減ることになります。
いつも言うように、誰かの赤字は必ず誰かの黒字であり、誰かの黒字は必ず誰かの赤字なのでございます。
よく考えてみれば当然のことです。
税収が増えることで政府部門の収支が改善するわけですから、税金を取られる民間部門の収支はその分の赤字になります。
政府部門の収支 + 民間部門(企業・家計)の収支 + 海外部門の収支(経常収支) = 0
これはこの宇宙にいるかぎり誰も逃れることのできない絶対原則です。