経済成長と貨幣供給

経済成長と貨幣供給

岸田内閣に期待することは何もない。

ことし4月、岸田内閣は日本経済について2060年度までの展望を示しました。

それによれば、「財政や社会保障の長期安定性を確保するには、実質成長率を1%以上に引き上げていくことが必要」とし、しかも「最低でも1%の成長をしていけば、2040年までに政府債務残高のGDP比率は下げ止まり、その後は再び反転上昇するだろう」と言っています。

まこと、〇〇も休み休み言ってくれないと、いいかげん突っ込み続ける気も失せてきます。

まず、「長期にわたり最低でも1%の成長…」と言うけれど、識者によっては「長期にわたり1%以下の成長では資本主義とは言えない」と指摘する人もいるぐらいです。

すなわち「成長率1%以下では資本主義の定義を満たしていない!」ということであり、1%以上の成長をするのは最低限どころではなくあたり前の話です。

次いで、政府債務残高の対GDP比率を財政指標にすることに、そもそも意味がありません。

先進国で重視しているのは今では日本だけで周回遅れです。

かつて政府債務残高の対GDP(当時はGNP)比率が300%ちかくあった英国でさえ財政破綻などしていません。

そりゃぁ、ポンドという自国通貨建てで国債を発行しているのですからあたり前です。

政府債務残高の対GDP比率が200%程度の日本が破綻する可能性など同様の理由で皆無です。

そして、これもそもそもの話なのですが、内閣府が言う「実質成長率を1%以上にしなければ財政が確保できない…」というのもまた考え方の順番が違っています。

「財政」を確保するために「成長率」が必要なのではありません。

成長率を確保するためには、どれだけの財政支出が必要なのか、です。

資本主義の下では、政府が貨幣を創造して供給する(財政支出を拡大する)ことで経済が成長します。

例えば江戸時代のような封建社会経済の下では、増税や歳出改革によって財源を確保できなければ財政支出を拡大することができず、経済は一向に成長しません。

現に、8代将軍の吉宗以降の江戸経済は、財源の枯渇を理由に財政を引き締めに引き締めたためにデフレが続いてほとんど経済成長していません。

江戸時代(元禄以降)の人口が3,000万人程度で頭打ちになってしまったのはそのためです。

当時既にMMT(現代貨幣理論)を理解していた荻原重秀のような優秀な勘定奉行(幕臣)もいて、彼は貨幣創造による経済成長の必要性を説いたのですが、あの当時では受け入れられることはありませんでした。

当然のことながら、貨幣創造できなければ経済(GDP)は成長しません。

幕府による新たな通貨供給がないのでは、民は新たに創造された貨幣を手にすることができないわけです。

むろん、現代でもMMTを理解できない人がほとんどなのですから仕方のないことではあります。

ただ、MMTを理解できないだけならいいのですが、現代の緊縮財政派は封建社会の財政運営を地で行くから実に質(たち)が悪い。

今後、財務省は「金利ある世界に入るので、国債の利払い費が膨らむ」というレトリックを使ってきます。

つまり「これからは利払い費が膨らむんだから、財政支出は拡大できませんよ…」と。

これに対して反論できるメディアは皆無であり、政治家(国会議員)は僅かしかいません。

我が国の経済財政を展望すると、絶望しかないのです。