今、日本の政治を劣化させているものを挙げよ、と問われれば、その一つとして政党助成金制度を挙げざるを得ません。
当該制度は、1990年代の政治改革論議のなかで浮上し、1994年に成立しました。
その根拠法(政党助成法)では、「政党の政治活動の健全な発達の促進及びその公明と公正の確保を図り、もって民主政治の健全な発展に寄与することを目的とする」とされています。
ここでいう政党とは、同法律によって要件が規定されている国政政党のことです。
しかしながら、今や日本国民の国政政党への期待はだだ下がり状態です。
今月のNNN世論調査の結果をみますと、支持する国政政党について、「支持政党なし」の比率は54%にまで達しています。
なお、共同通信社の調査においても「国政政党以外の政党・政治団体の支持」は2.0%、「支持する政党はなし」は30.0%、「分からない・無回答」が2.0%で、「国政政党を支持しない者」は34%となっています。
要するに、支持する国政政党なしの比率は、どの国政政党の支持率よりも多くなっており、こうした傾向が固定化されるようであれば、既に政党助成法の立法事実は消滅しているに等しい。
政党助成法は、政治における国政政党の機能の重要性に鑑みて、「政党交付金」による政党助成を行っています。
ただしそれは、さまざまな国政政党を支持する国民が全体の過半数、少なくとも3分の1を超える状態であることが最低限の前提でしょう。
であるならば、前述の世論調査の結果をみるかぎり、その前提条件は既に崩れています。
例えば、国政政党が100%の議席を占有するものの、その支持率が50%以下であるならば、それは民意を反映した議会とは言えず、それを生んだ公職選挙法と政党関連法は、法の下の平等を定めた日本国憲法第14条に違反し総体的に無効とされるべきです。
また、少ない支持率であるにもかかわらず高い議席占有率を持つ国政政党に政党交付金を与えることは、政党・政治団体の公平性、平等性の原則に明らかに反していますので、政党助成法もまた違憲無効とすべきです。
ゆえに政党助成法は国会において廃止すべきですが、不公正な既得権益を有する国政政党が自らこれを放棄することなどあり得ないでしょう。
現行の公職選挙法による選挙制度は、明らかに国政政党を特別待遇する選挙ギルド制であり、普通選挙制度による民主主義を否定した制限選挙制度に等しい。
選挙権は平等であっても、被選挙権は明らかに不平等なものです。
ご承知のとおり、現在の国政選挙では、既成政党に所属する候補者と、無所属や他の政治団体所属の候補者とでは、政見放送、選挙ビラの数、選挙ハガキの数、街宣車の数などについて多くの差別があり、選挙運動の平等性が全く認められていません。
国政選挙が行われるたびに「一票の格差」の訴訟が年中行事として提起されますが、そんなチンケで形式不平等の訴訟の争点よりも、政党助成法と公職選挙法による実質的不平等のほうが遥かに問題だと思います。
そして何よりも、小選挙区制度と政党助成制度が導入されたことで、政党本部(総理総裁など)の権力基盤だけが強化され、国政政党に所属する国会議員たちは与野党ともに政党本部の顔色ばかりを伺うようになり、国民の生活実態などには目もくれなくなってしまったことは言うまでもありません。
なお、多くの地方議会では、政党助成制度に支えられた政党に属する地方議員たちが会派を結成し合って議会運営を専横し(注:日本共産党は政党助成金を受け取っていない)、国政政党に属さぬ地方議員の意見を封殺しているのが実状です。