感謝されぬ減税

感謝されぬ減税

「増税メガネ…」の汚名を払拭すべく、岸田内閣が6月からはじめた定額減税ですが、産経新聞グループのマーケティング会社が行った意識調査によれば、76.6%のヒトがその効果を「期待できない」と回答しているらしい。

期待できない理由としては、「物価上昇に追いつかない」「(給料から)天引きされるので実感がない」などがあり、要するに国民の4人に3人が、その効果を疑問視しているとのことです。

「減税」というシンプルな財政政策を、不必要なまでに複雑な制度にしてしまったために、企業財務などからは不満がでています。

コロナ禍の際に行った「定額給付金」のように、国民がそれぞれに持つ金融機関の口座に4万円を振り込んだほうが余程に感謝されただろうに。

岸田総理が「定額給付金」ではなく、「定額減税」という給料からの天引きにした理由は概ね見当がつきます。

それは、新たな国債を発行したくなかったからです。

むろん、岸田総理というより財務省様のご意向でしょうけど。

新たな国債を発行すると、むろん政府債務残高が増えます。

コロナ禍で行われた一人10万円の「定額給付金」の際、政府は新規国債の発行によりその財源を捻出しました。

それによりプライマリー・バランスが90兆円程度のマイナスになったのですが、財政は一向に破綻の兆しが見えない。

それで「おい財務省っ、話が違うじゃねえかぁ〜」となり、財務省が喧伝してきた「財政破綻論」のインチキが広く知れわたるところとなってしまったわけです。

ゆえに、今回は減税(所得税からの天引き)という形にすることで、新規国債の発行を回避したのではないでしょうか。

依然として財務省のスタンスは、「今は国民の預貯金が潤沢だから、それを原資に政府は国債を発行することができるけど、それがいつまで続くかわからない。だから厳しい財政規律が必要だ」というものです。

残念ながら、この財務省の主張を鵜呑みにしている政治家、役人、メディア、学者、国民がほとんどです。

しかしながら、政府の国債発行は国民の預貯金を原資にはしていません。

そもそも政府の支出に予算的・資金的な制約はなく、インフレ率が許す限りにおいて、政府は「無」から国債を発行する、すなわち貨幣を創造することが可能です。

なお、ここで言う「インフレ率」とは、デマンドプル・インフレのことであって、コストプッシュ・インフレは含まれません。

しかも「国民の税金で国債を償還している…」というのも嘘です。

税収で国債を償還している先進国など一つもありません。